元勇者、聖王に頼み事される
「実はノエルに一つ頼み事があるのよ。」
俺に頼み事?
「この村には圧倒的に子供が少ないじゃない? だから、聖国で保護している孤児を何人か引き取ってほしいのよ。」
「引き取る? 子供を?」
「そう、何らかの事情で家族を無くしたり捨てられたりした子供達を教会から送って、聖国にある孤児院で保護しているのよ。」
その話を聞いて、思い出した事がある。
勇者として魔王討伐の旅をしていた時に、魔族に襲われた村にいくつか立ち寄った事がある。
村人に頼まれて魔物退治をしたんだが、村で見たのは親の遺体にすり寄りながら泣きじゃくっている子供の姿だった。
俺はこの子達の笑顔を守る為に旅をしているんだな、と思った。
そして、魔王を倒してハノイ村までの帰り道に、その救った村へ立ち寄った。
鎧や兜をしてないから、俺が勇者だという事に、人は基本的に気づいていない。
ただ中には気づく人もいてお礼を言われた事もある。
その時に見たのは子供達が施設で無邪気に遊んでいる姿だった。
それを見た時に報われた気分になった。
「わかりました。引き取らせてもらいます。」
「後日、シスターと一緒に連れてくるからヨロシクね。あ、その中にはステラの子供もいるから。」
・・・・・・は?
「今、聞き捨てならない事言ったよなっ!? ステラに子供がいるのかっ!?」
「正確に言えば妊娠していたのよ。まぁ、私の力で取り出してある程度は成長してるわ。当然だけど親の顔なんて覚えてないし、記憶もない。ステラもこの事は知らないし、教える気もない。これも彼女の罰よ。」
正直、複雑な気分だがしょうがない。
まぁ、会った瞬間そんな複雑な気分は吹っ飛んだんだけどな。
我ながら単純だと思う。