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元勇者は静かに暮らしたい(Web版)  作者: こうじ
領主編
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幕間 クリスタの決意

 アムール商会の倒産はシュヴィアの建築家達に大きな影響を与えていた。


 それでも、影響はすぐに無くなるだろうし、騒ぎも収まるだろう、と思っていた。


 クリスタが代表を勤めるクリスタ商会にもそんな意見が多かった。


 そんな中クリスタはある紙を見ていた。


 それは国からのお達しで『未開発の村への開拓団のメンバーの募集』である。


 場所はハノイ村、これはノエルがシュバルツに依頼した物であるが、建築家達は無視していた。


 大きな理由としては、長期間の拘束、給金の少なさ等があげられる。


「代表、コンペに出す模型の試作品が完成しました。」


「うん、・・・・・・デザインはちょっと抑えた方が良いわね。安全性の方はどうなってるの?」


「代表の言われた通りにしております。」


 図面と模型を何度も見比べながら真剣な目で見ながら細かい修正部分を口に出していく。


 部下はそれをメモしていく。


「・・・・・・これなら大丈夫ね。」


「では、新たに作り直します。」


 部下は一礼して部屋を出ていった。


 クリスタは再び紙を見る。


「開拓、かぁ・・・・・・。」


 クリスタは実際にハノイ村を見ていて資源の多さにビックリしていた。


 きっと、参加すれば良い経験になるのはわかっている。


 しかし、周りが賛同しないのは目に見えている。


 代表としての地位を取るか、一建築士としての経験を取るのか。


 クリスタはそこを悩んでいた。


 そんな中、クリスタは国から呼び出された。


「実は貴女の商会に不正の疑いがあります。」


「えぇっ!?わ、私はしてませんっ!!」


 シュバルツから言われた言葉にクリスタは否定した。


「正確に言うと貴女の部下がある貴族の屋敷の改築工事のコンペの時に金を渡した、という証言が出ている。これが事実だとしたら貴女の商会に罰を与えなければならない。」


 クリスタは目眩がした。


 不正などせずに正々堂々とデザインで勝負してきた、と自負があった。


 しかし、自分の知らない所で不正が行われていた、とは・・・・・・。


「クリスタ嬢、大丈夫ですか?」


「は、はい・・・・・・。すみません、知らなかったとは言え申し訳ありません。責任は取りますので・・・・・・。」


「あくまでまだ疑いの段階ですから、それに今の貴女のリアクションで貴女は関与していない、と確信しました。」


「疑いが出た時点で私の管理不届きですから・・・・・・。」


 その後、商会に戻ったクリスタは部下を呼び出し問いただした。


 部下はあっさりと不正の事実を認めた。


 しかし、悪びれる事もなく他の商会もやっている、と言ってのけた。


 怒鳴りたいやら泣きたいやらクリスタは様々な感情が渦巻いていた。


 結果、クリスタが最終的に出した決断、それは・・・・・・。



 クリスタ商会の代表の辞任、そしてハノイ村の開拓団への参加だった。  


  

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