幕間 後悔先に立たず
シュヴィアの王都の一等地にあるアムール商会
その現代表でありアムールを追い出した張本人である『ゼオール・ドラッガー』は、現在非常にまずい状況に陥っていた。
切っ掛けは言わずもがな伯爵家で起こった事故だ。
設計ミスであると断罪され、国会に呼ばれて追及され、得意先だった貴族からは契約を打ち切られ、メンバーには次々と辞められ、多額の賠償金を支払う羽目になったのだ。
絵にかいたような転落である。
「どうして・・・・・・、こうなったんだ・・・・・・。アムールを追い出してこれから軌道にのる筈だったのに・・・・・・!!」
自室で一人愚痴るゼオール。
「そもそも、アレは俺がデザインした訳じゃないんだっ! 俺が直接悪い訳じゃないのにっ!!」
「いや、建築士として基本を忘れたお前が悪い。」
突然、声がして俯いていた顔をあげたゼオール。
扉の前にいたのはエモルドだった。
「し、師匠・・・・・・、何故此処に? 私に救いの手を差しのべてくれるのですか?」
エモルドはため息を吐き、
「まぁ、ある意味救いかもしれんが・・・・・・、ゼオール、お前は建築士として一番大切な事を忘れていたからこうなったんじゃ。 何かわかるか?」
「大切な事・・・・・・?」
「わからんようじゃな・・・・・・。お前は儂の元で修行していた頃も儂の話を聞いていなかったな。 家とは住人が快適に、幸せに暮らす為にあるのじゃ。 しかし、お前は目先の地位や名誉に目が眩み、一番大切な『安全性』を軽視しておったのだ。」
「そ、それは・・・・・・、しかし私だけじゃありません! 周りの建築士達も似たような事をしておりますっ!」
「そう、儂の教育不届きでもある。儂も責任を取るつもりじゃ。だから、お前も責任を取れ。」
「せ、責任と申しますと・・・・・・?」
「この商会をたたみ、もう建築の世界から足を洗え。お前は向いていなかったんじゃ。」
「そ、それはっ・・・・・・、追放という事ですか・・・・・・っ!?」
「そのつもりで言ったはずじゃが? 師である儂が引導を渡すのが当たり前じゃろ?」
ゼオールはガクッと崩れ落ちた。
その数日後、アムール商会は閉店した。