元勇者、彫刻家と会う
内装を手掛け始めて、1ヶ月が経過した。
ほぼ完成したのだが問題は女神像が無い事だ。
「修復するにも結構精密に作られていますから、余程腕がある彫刻家が彫った物ですよ。」
「って事になると、レベルが高いな。やっぱり新しい物を作った方が良いのか?」
しかし、当然だがそんな伝手は無い。
ギルドに依頼するべきなのだろうが、果たして受けてくれるかどうかわからない。
どん詰まり状態だ。
が、そんな時に救いの神はやって来る。
「ノエルさん、レバニアに腕の立つ彫刻家がいますから紹介しましょうか?」
「マジかっ!?」
ミレットからの提案にくいついた。
「はい、僕の同級生で王族お抱えの彫刻家だった奴です。」
藁にもすがる思いでミレットにお願いした。
数日後にその人物はやって来た。
「初めまして、『サニー・ライアス』と言います。」
「ノエル・ビーガーだ、宜しく頼む。」
「こちらこそ。女神像を手掛けるなんて彫刻家にとってはありがたい事ですよ。」
「サニーには兄の事で迷惑かけてしまったからね。罪滅ぼしになるかどうかわからないけど。」
ミレットが申し訳なさそうな顔をしている。
「別に気にしてないから良いよ。」
「何があったんだ?」
「魔王討伐後、父上の我が儘で兄の銅像を作ったんですが、その製作者がサニーなんです。」
そういえば、そんな事聞いたな。
「そういえば、その銅像はどうなったんだ?」
「クーデターの時にぶっ壊れました。サニー、アレわざと壊れやすい様に作ったでしょ。」
「あはは、あの時は余りの要求の多さでイラッと来たから、ちょっとした悪戯心でね。」
見た目とは違ってたくましいもんだ。




