元勇者、クリスタの事情を知る
「そりゃ、どういう事だ?」
「私の実家は不動産関係の仕事をしてるんだけど、元父親は客の足元を見るタイプで、侯爵とか伯爵家なら立派な家を売るんだけど、男爵とかだったら、適当に売っていたのよ。」
「て事はアムールの実家は・・・・・・。」
「男爵家。それで元父親は欠陥のある家を売ったのよ。でも、客は何も知らないから喜んでいたのよ。私はそれが心苦しかったわ。」
「じゃあ、アムールと会ったのは弟子になってからじゃ無かったのか。」
「アムールは覚えてないはずよ。私もチラッと見ただけだから。でも何となく覚えてはいたのよ。だから、弟子入りして再会した時はビックリしたわ。それから、徐々に仲良くなっていったんだけど・・・・・・。」
急にクリスタの表情が曇った。
「アムールの両親、自殺したのよ。騙されたのがショックで。」
「・・・・・・。」
言葉が出なかった。
「家を買う時に借金をしていたみたいで、せっかく買ったのが欠陥住宅で、周りに色々言われてストレスで・・・・・・。その話、聞いた時はショックで・・・・・・。それで元父親と大喧嘩して絶縁したの。」
「でも、それはクリスタが悪い訳じゃないだろ?」
「私が納得いかなかったの。 そんな騙して手に入れたお金で生活していたなんて気持ち悪いし、申し訳なくて・・・・・・。」
なるほど、クリスタにはクリスタなりの事情があるのか。
「だから、私は決して不幸にさせない家を作りたいのよ。だけど、貴族は見た目を重視する傾向があるから・・・・・・。」
クリスタは溜め息を吐いた。
現実は厳しいみたいだな。