元勇者、アムールとクリスタの師匠と会う
シュバルツと話した後、城を出ようとした所、サリウス王に会った。
「ノエル殿、いらっしゃったのですか。」
「王都に用が会って来ていたんだよ。」
サリウス王の隣には賢そうな老人がいた。
「サリウス王、この青年が先程話されていた勇者殿ですかな?」
「えぇ、そうです。『エモルド』殿。」
えっ、エモルド?
「ひょっとして建築士のエモルド・ドラッガーさんですか?」
「ほぅ、儂を御存知でしたか。いかにもエモルド・ドラッガーとは儂の事ですじゃ。」
クワックワックワッと豪快に笑うエモルド。
「お弟子さんのアムールさんに仕事を依頼してまして・・・・・・。」
「ほぅ、アムールにですか? あ奴は弟子の中でも優秀な奴ですわ。純粋に建築について学んでいる将来性のある若者じゃ。ただ純粋過ぎるのが難点ですがな。」
「実は、城の建て替えの相談をエモルド殿としていてな、弟子の中からデザイナーを選ぼう、という話をしていたのだ。」
そういえばこの城はエモルドさんがデザインした、って言ってたな。
「そういえば、聞いてますか? アムールさんが商会を追い出された、って言うのは。」
「いや・・・・・・、それは初耳じゃが。」
一瞬、表情が変化した。
本当に知らなかったみたいだ。
俺はアムールやクリスタから聞いた話をエモルドさんに話した。
「そんな事があったとは・・・・・・。 儂も最近、隠居生活をしていて弟子達の近況を聞いておらなかった。」
「確かに、最近の貴族の建物を見ていると一見豪華だが無駄な装飾があったり、部屋数が多すぎたりしておる。」
「儂は建物とは依頼主の事を考え、機能性や利便性を重視せよ、と教えていたはずじゃが・・・・・・、どうやら足りなかったみたいですわい。キツいお灸が必要みたいじゃな・・・・・・。」
エモルドさんは何か考えているみたいだが、この時はわからなかった。
まぁ、後に貴族達や建築士達の価値観をひっくり返す様な出来事が起きる事になる。