元勇者、アムールの事情を知る
「僕達の師匠は『エモルド・ドラッガー』と言ってシュヴィア城を設計した方で、結構有名人なんです。」
工房に入って改めて事情を聞く事にした。
「それで『暖簾分け』してライバルとしてやって来たのか。」
「だけど、最近になってアムール商会の作風が変わってきたから、気になって職人に聞いてみたのよ。そしたらアムールが追い出された、って聞いたからっ・・・・・・。」
手をギュッと握りプルプル震えているクリスタ。
「て言うか、追い出した奴も同じ弟子なのか?」
「兄弟子なんですけど、経営とかは全部任していたので・・・・・・。」
「あんなの兄弟子じゃないわっ! アムールの才能に嫉妬してわざと協力したのよっ!」
どこにでも強かな奴はいるもんだ。
「でもライバルなんだろ? いなくなって好都合なんじゃないか?」
「そうだよ、僕はもうフリーの建築士で貴族からの依頼は受けないつもり。これからは庶民の相手をするんだから。」
「・・・・・・確かに商会にとっては好都合だろうけど、私は同期でライバルなのよ。心配して当たり前じゃない。」
「そっか・・・・・・、ありがとねクリスタ。」
「っ!?」
・・・・・・あぁ~、そう言う事か。
クリスタの顔がポッと真っ赤になったので、漸く事情が理解した。
アムールは鈍感そうだからな、上手くいけたら良いんだけどな。
ただクリスタも素直じゃなさそうだし。
「俺はちょっと街の中を一時間位歩いてくるから。」
そう言って俺は一旦工房を出た。
向かったのはシュヴィア城。