元勇者、アムールの人間関係を知る
シュヴィアの王都のメインから少し離れた裏路地にアムールの工房はあるそうだ。
「僕が個人的に使っている工房なんですよ。」
「へぇ~、でも商会にも工房があるんじゃないのか?」
「えぇ、最新式の道具が揃っている立派な工房ですよ。だけど、僕は自分の工房が落ち着いて好きなんですよ。あ、彼処ですよ。」
アムールが指差した先には所謂、長屋の一角にアムールの名前が書いてある看板だけが連れ下げられている、言われなければわからない普通の家だ。
「でも、誰か立ってないか?」
「ん?誰だろ・・・・・・?」
工房の前には一人の少女が立っていた。
「あの、僕の工房に何か用ですか?」
「あっ!アムールっ!あんた、どこにいたのよっ!?」
「あぁっ!『クリスタ』っ!? 何で此処に?」
クリスタ?
クリスタ、って確かライバルのクリスタ商会の代表?
そのクリスタと呼ばれた少女はアムールの襟元を掴んでグイグイと揺さぶっていた。
「あんたが商会を追い出された、って聞いたからよっ!? 一体どういう事なのよっ!?」
「は、話せばわかるから・・・・・・。」
「とりあえず、離してもらえないか?」
「誰よ、あんた?」
「ゲホッゲホッ・・・・・・、今の雇い主だよ。」
「ハノイ村の村長兼領主のノエルだ。今、アムールに依頼しているんだ。」
「そうなの・・・・・・。私は『クリスタ・ドラッガー』よ。」
へっ?ドラッガーて・・・・・・。
「あぁ、ドラッガーて言うのは師匠の姓で、僕達は兄弟弟子なんです。」
あぁ、そう言う事なのか。