元勇者、頼まれる
その後、みんなにアムールを紹介した。
「アムールさんの名前は聞いた事があります。シュヴィアで1、2を誇る一流建築士だ、って。」
やっぱり王族や貴族の間では有名なのか。
「だとしたら、おかしいじゃないか? 自分で作った商会を追い出されるなんて。」
サラが疑問を投げかける。
「ひょっとして、最初から地位や名声が欲しくて近づいたんじゃないかしら? 手にいれたからお払い箱にされた、とか。」
「あはは、かもしれませんねぇ。でも、僕はどっちでも良いんですよ。逆に感謝してるんです。」
「追い出されたのが、か?」
「はい、僕は貴族のご機嫌を取るより、困っている人達の役に立ちたいんですよ。ですから、漸く自分の好きな事が出来る!っていう気持ちでいっぱいなんです。」
何か気持ちがわかるな。
俺も勇者時代は自分を押し殺していたからな。
アムールは、暫く村に滞在をする事になった。
翌日
「皆さんにお願いしたい事があるんです。材料の切り出しをしてもらいたいんです。」
「材料の切り出し?」
「はい、土と木材が必要ですから。」
「木材は近くの森から伐ってくれば良いが、土はどうする?」
「土は水辺の土を使いたいんです。」
「だったら、河辺に岩場があったな。」
「しかし、人数が足りないだろ?」
「あぁ、大丈夫。助っ人を用意したから。」
「助っ人?」
と
「おーい、連れてきたぞ~。」
現れたのはガーザスとその元部下達だ。
事前に連絡しておいたんだよな。
ガーザスは軍を辞めて冒険者に戻ったが、元部下達とは今でも交流がある。
「よしっ! じゃあ作業に取りかかるぞっ!」
「頼もしいですね。彼等はレバニアの方々ですか?」
「あぁ、俺が個人的に交流をしている奴等だ。」
この村はシュヴィア領に入ったが、特別にレバニアとの交流は認めてもらっている。
「僕は一旦、家に戻って道具を取りに行きます。」
「俺もついていくよ。」
俺とアムールは王都に向かった。




