元勇者、気づかされる
アムールを連れてハノイ村に戻ってきた俺は早速、建物を見てもらった。
「村一番の建物なんだ。流石にこれを直すレベルの魔法は持って無いんだ。」
「へぇ・・・・・・。」
村一番の建物、それは『教会』だ。
昔は村の集会所みたいな役割をしていて、牧師様の話を聞いたり、悩み相談をしたり賑やかだった。
それも遠い昔の話で長年雨風にうたれたせいで壁はボロボロ、屋根は穴が空いている。
アムールは壁に触り感触を確かめている。
「この壁に使われている土はこの辺で取れた土ですか?」
「確かそうだった、と思う。」
「床や屋根に使われている木材もそうですか?」
俺は頷いた。
「なるほどなるほど・・・・・・。」
アムールはうんうんと一人で頷いていた。
「それで直せるのか?」
「えぇ、大丈夫です。昔の様になりますよ。」
ニッコリ笑い断言するアムール。
「マジかっ!」
「えぇ、この土地にある最高の『素材』を使えば大丈夫ですよ。」
「へっ? 最高の素材?」
「はい、ここの土は建築に適した土ですし、木材も管理さえすれば最高の木ですよ。」
「・・・・・・そんなに良い物なのか?」
「身近にあるとわからないもんですよ。やっぱり山の中にあるのが良いんですよ。建築士にとっては宝ですよ、この土地は。」
俺にはアムールが何かウキウキしてる様にみえる。