元勇者、裏側を知る
あれから1週間が経過したがギルドから何も連絡は来ていない。
「報酬が安かったか? それとも期限が短かったのか?」
「いや、適切だと思うんですけど・・・・・・。」
だから、様子を見にもう一度土木ギルドに行ってみた。
依頼版には相変わらず貼られている。
誰も手に取った痕跡は無い。
頭に?マークを浮かびながら立っていると職員が新たな依頼書を貼った。
邪魔にならない様に退いて様子を見ているとその依頼書の周りに職人達が集まった。
「おっ! グランディ伯爵家の改装依頼かっ!」
「よしっ! この依頼は家が貰ったっ!」
「バカ言えっ! お前の所はこないだベランガ侯爵の所を引き受けたじゃないかっ! 家に廻せっ!」
ぎゃあぎゃあと騒ぎ出す職人達。
「なんじゃこりゃ・・・・・・。」
「いつもの光景ですよ。」
後ろから声がして振り返ると優しそうな青年がニコニコしながら立っていた。
「いつもの光景って?」
「みんな、貴族や王族からの依頼しか受けたがらないんですよ。」
「何でだ? 庶民だって家が欲しいだろうし改築したいはずだろ?」
「簡単に言ってしまうと地位や金ですよ。貴族や王族に気に入られれば、お抱えになれますからね。それで莫大な財産が手に入れる事が出来るんですよ。」
「でも、そう言うのはランクが高いだろ?」
「えぇ、そうです。だから大手の商会が依頼を取ってきて職人にやらせてます。この辺だと『アムール商会』と『クリスタ商会』が牛耳っています。」
「って事は、あの職人達も?」
「どちらかに所属しています。」
・・・・・・権力争い、とか派閥争いとかどこにでもあるんだな。
「じゃあ、庶民の家とかは後回しになるのか。」
「残念な事ですがその通りです。」
「・・・・・・開拓となると?」
「まず、引き受ける事は無い、と思いますよ。時間もかかるし危険もありますから。」
・・・・・・何かガッカリしたな。
結局は金と名誉か。
「貴方は依頼に来たんですか?」
「あぁ、1週間前に依頼出したんだが連絡が来ないから様子を見に来たんだが、こりゃ自分達でやった方が早いかもな。」
「貴方は職人なんですか?」
「いや、でも建築魔法や改修魔法とかは使える。」
「なるほどなるほど・・・・・・、因みに場所は?」
「ハノイ村だ。」
「あぁっ・・・・・・、そう言う事ですか。」
そう言うと青年は掲示板に近づき俺が出した依頼書を手に取った。
「この依頼、僕が引き受けさせてもらいます。」
「あんた、職人なのか?」
「僕は建築士の『アムール・ドラッガー』と言います。」
へっ?アムールって・・・・・・。
「さっきのアムール商会は僕が立ち上げた商会なんです。・・・・・・まぁ、最近追い出されたんですがね。」




