元勇者、けじめをつける
二人は驚きを隠していなかった。
「ノエル、生きていたの・・・・・・?」
「勇者の鎧をなめてもらっちゃ困るな。」
「お前が・・・・・・、全て仕組んでいたのかっ!?」
「俺にそんな脳味噌は無いよ。大体、俺は王都に一度も行って無いんだよ。直ぐに此処に帰って来たからな。」
「此処?」
「この立て札を見ろ。」
俺は立て札を指差した。
立て札には『この先シュヴィア国ハノイ領』と書かれている。
「えっ!? この先って・・・・・・、ハノイ村なのっ!?」
「そうだよ、俺達の故郷、ハノイ村だ。」
「し、しかしハノイ村はレバニアの領土のはずだっ!?」
「それがシュヴィア国王が交渉してシュヴィア領になったんだ。そして、俺はハノイ村改めハノイ領の領主となる予定だ。」
二人は呆然と立ち尽くしていた。
「さて、何で俺がお前達の前に現れたかわかるか?」
「まさか・・・・・・、手を下しに来たのか?」
「俺は正直どうでも良い、と思っている。でもな、一発喰らわせたい、と思っている人物がいるんだよ。出てきてくれ。」
木の影から現れたのは・・・・・・、
「お久しぶりです。カイン様。」
「サ、サーニャ・・・・・・。」
そう、サーニャだ。
「私も四の五の言うつもりはありません。ただ、ケジメとして一発引っ叩いても宜しいでしょうか?」
「・・・・・・良いだろう。それぐらいの事をしてしまったんだ。おもいっきりやってくれ。」
「それでは遠慮なく・・・・・・。」
そう言ってサーニャは振りかざした。
「あ、間違えました。ぶん殴っても宜しいでしょうか? 良いですよね?」
「えっ?」
次の瞬間、サーニャは握り拳をカインの顔面に命中させていた。
ボゴッ!と言う音と共に綺麗にぶっ飛んでいったよ。
「ノエル様、ありがとうございます。綺麗に決まりました。」
「よかったな、サーニャ。指導のかいがあったよ。」
実はサーニャから頼まれて指導したんだ。
女性とはいえ、流石は軍人の娘だ。短期間で成長したよ。
ステラはガタガタと震えている。
「さてステラ、人の事を『戦闘しか脳が無い』とか散々罵詈雑言な手紙を書いてくれたよな?」
「そ、それはその・・・・・・。」
「お前の家とは家族ぐるみで付き合いがあったし幼い頃は良く遊んでいたが、・・・・・・正直ショックだったよ。仲間だと思っていたのは俺だけでお前達は俺の事を何とも思っていなかった。その時の俺の気持ちがわかるか?」
「ご、ごめんなさいっ!!」
ステラは土下座をした。
「私、調子に乗ってました! 周りからちやほやされて村の事、完全に忘れてました! 出来るなら私、一から、ううん、0からやり直したい!」
泣きながら謝るステラ。
「いや、やり直すならマイナスからのスタートだ。それにそれを決めるのは俺じゃない。ただ、今の言葉が本心だとしたらやり直せる、と思ってるよ。」
「本当に・・・・・・、ごめんなさい・・・・・・。」
その後、ステラは再び馬車に乗り込んだ。
カインは気を失ったままだったから兵士が抱えながら馬車に乗せられて馬車は去っていった。
「これからどうなるんでしょうか?」
「茨の道を歩いていく事になるだろうな。」
ただ、ステラの言葉を信じるとするなら、やり直す事を信じたい。
後日、カインは国外追放と強制労働で鉱山行き、ステラは聖国にある施設にて再教育を受ける事になったらしい。
次回で『元勇者編』は終わりです。そのまま『領主編』になります。