元勇者、聖王と会う
戴冠式まで後4日
まぁ、相変わらず此方には影響はなく平和そのものだ。
こういうのを嵐の前の静けさ、というのであろう。
そんな中、シュバルツが少女を連れてやって来た。
何か、シュバルツが疲れた顔をしているが・・・・・・。
「貴方が今代の勇者ね? 私は先代勇者の仲間だったミラージュって言うの。世間的には聖王と呼ばれているけど。」
銀髪の長い髪に神秘的な紫の目。まぁ、見た目は10代ぐらいに見えるが、雰囲気が只者ではない。
「せ、聖王て聖国の王の?」
「そうよ。」
いや、何でそうあっさりと認めるんだか・・・・・・。
て言うか、聖王って聖国から出て良いのか?
「まぁ、聖国って言っても結局は監禁されていたのと一緒なんだけど。」
「監禁? 魔王を倒した英雄なのに?」
「魔王を倒したからよ。「魔王を倒した=魔王と同じ力を持っている」と当時の王国の関係者は考えたみたいね。だから、私達勇者パーティーを褒章という名であの島に押し込めたのよ。最初は何にもない未開拓の島だったんだから。だけど、『クラウド』、先代の勇者なんだけど、彼は前向きで『この島を僕達の理想郷にしよう』って言ってね。何十年もかけて街を作り上げたわ。」
先代勇者は不遇な扱いを受けても前向きだったんだな。
でも、その前向きさはわかるような気がする。
「話は変わるけどステラの件に関しては任命した私の責任でもあるわ。それは謝罪させて欲しい。」
そう言ってミラージュは頭を下げた。
「聖王様が謝らなくても良いですよ。」
「いや、ステラを聖女と認定したのは私なんだから、責任は取らせてもらうわ。まぁ、既に聖女としての資格は無いんだけど。」
「? どういう意味だ?」
「聖女はね、誰とも結婚出来ないのよ。何も欲しがってはいけない、誰も愛してはいけない、世界の平和を願いその身を捧げるのが聖女の役目なのよ。だから、もうステラには聖女の力は無いはずよ。」
ちゃんと説明したはずなのにね、と苦笑いしているミラージュ。
んな話、ステラから聞いた事無かったな。