元勇者、戦う
ガギィィィンンッッッ!!という音が響いている。
剣と剣がぶつかり合う男だ。
「……」
グググッと力に任せて押してくるのを俺は一旦引き間合いを取る。
(流石に鎧相手に不利だな)
俺は鎧なんて着てないし、長引けば段々と不利になってくる。
「ここは短期決戦といきますか……」
俺はそう呟くと一旦剣を鞘に収めた。
鎧は何事かとビクッとなった。
そりゃそうだ、戦闘中に剣を鞘に収めるなんて戦意喪失みたいに見えるだろう。
だが俺はニヤリと笑った。
「一瞬だけ痛いけど悪く思うなよ」
「……っ!」
そう言った瞬間だ。
俺は素早く鎧に近づきそのまま剣を抜き下から上に向けて斬った。
「……」
鎧は固まっていたが膝から崩れ落ちた。
ガシャンと倒れたと同時に兜が割れた。
「意識は……、気を失っているだけか、魔力を吸い取られて衰弱してるな」
俺はエレインの脈を計り背負った。
「ふぅ……」
「ノエル、終わったみたいだね」
「おぉ、ユウスケ。 ……その縄で締めてる輩が今回の元凶か?」
「そ、逃げ出そうとしていたのを手刀でね」
ユウスケはズルズルと気を失い縄で縛られた魔族の男をズルズルと引きずりながらやってきた。
「コイツはアリスに引き渡そう」
「そうだね、あ、丁度サラさんの出番みたいだよ」
「そうか、エレインを医務室に連れて行ってからでも間に合うか、あ、その前にコイツは柱に縛り付けとくか、」
俺は魔族の男を柱にグルグル巻きにした。
それと逃げ出さない様に結界をつけといた。
「コレで良いだろう」
俺とユウスケは会場に向かった。




