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元勇者、待ち構える
『それではただいまよりシュヴィア国武術大会を開催致します!』
アナウンスと共に会場内は歓声が響き渡った。
結局エレインの行方はギリギリまで探索したが分からずじまいだった。
そして、今日は武術大会本番を迎えた。
俺は会場となる闘技場の裏口にいた。
ここは関係者以外立入禁止の場所だ。
(ここを通らないと闘技場には入れない、もし鎧に洗脳されていたら別だけどな)
静かに俺は待っていた。
そして、数分後
ガシャンガシャンという音が聞こえた。
(来たな……)
俺は自分の目で確認した。
現れたのはどす黒く変色した鎧だった。
「エイレン、随分と行方を晦ましていたみたいだがどこに行っていたんだ?」
「……」
「精々その鎧を盗んだ魔族と一緒にいたんだろ? 俺を殺す打ち合わせとかしてたんじゃないか?」
「……」
何も言わずに剣を抜き構えた。
「本当は闘技場でやるつもりだったが余り人前で戦うのは慣れていないんだ。見せてやるよ、元勇者の戦い方を」
俺も剣を抜き構え駆け出した、それが戦いの合図だ。