幕間 騎士エレイン
エレイン・レバンズはシュバルツ国騎士団に所属する騎士である。
実家は公爵家だが昔から武芸に長けており騎士を目指すのは自然の流れであった。
性格も良く誠実実直の見本となる男だ。
唯一難点をあげるとすれば挫折を知らない事だろう。
エリート街道を歩んできた彼は今まで苦労をしてこなかった。
それを自慢するような人間ではないが多少は人を見下す様な気持ちもあるのは事実だ、完璧な人間などいないのだから。
エレインが自らの様子に異変を感じるようになったのはつい最近の事だ。
妙に疲れやすくなったし夜も不眠が続いている。
纏っている空気が重苦しくなっていたのだ。
(あの鎧を着てからだ……)
原因はエレインが1番わかっている、普段使用している鎧がメンテナンスに入るため代用品が配られたのだ。
(まさか、あの鎧が魔族が作った物だったとは……、一生の不覚だ)
あの鎧を着ていると妙な高揚感が生まれ体が勝手に動いているような感じがした。
気がついたら敵が倒されていた、という事もあった。
しかし、手柄を立てた、という手応えがエレインには無かった。
そんなモヤモヤした日々を過ごしていたエレインだったがノエルと国王の会話を聞き漸く理解した。
自分が着ていたのが狂戦士の鎧だった、という事に。
現在、エレインは自室待機という状態である。
(これからどうなるんだろうか……)
エレインはベッドに横になりこれからの事に不安を感じていた。
知らなかったとはいえ魔族が作った鎧を着て戦っていたの。
何らかの処分が言い渡されるかもしれない。
(処分は受け入れよう……、しかし……)
そこまで考えていた時だ。
ガチャリガチャリと金属音がしてきた。
(これは……、なんだ……)
こちらに近づいて来る音に冷や汗が止まらない。
そして月の光に現れたのは例の鎧だった。
「な、なんで鎧が……」
驚いていたがエレインの記憶が途切れた。