元勇者、魔王から頼まれる
「ノエル、頼みたい事があるっ!」
「ア、アリスどうしたんだ? いきなりやって来たと思ったら土下座して……」
「アリス様、何かあったんですか?」
俺とサラは入ってきてそうそう土下座してきたアリスに面食らっていた。
「え〜と、この女の子が魔王なの?」
ユウスケも戸惑うよな、たまたま来ていたのにいきなり魔王の土下座の場に立ち会うなんてな。
「何か魔族領であったんですか?」
「あぁ……、実は『狂戦士の鎧』が一着無くなってしまったんだ!」
「狂戦士の鎧? なんだそれは?」
「先代魔王が人間を強制的に味方にする為に開発された魔道具だ……」
そんなものが作られていたとは……。
「私も聞いた事がある。 確か着れば戦闘能力がアップするが理性を失い魔王に強制的に忠誠を誓わせる力がある」
「戦うことしか考えられなくなる危険な物だ」
「でも、俺が勇者だった頃にそんな奴と戦った事はないぞ」
「当時の魔王軍の幹部の日記に書いてあったのだが『勇者の仲間に使わせようと画策したが勇者パーティーはどうやら勇者を使い捨てようとしているようで不憫に思ったので使用せず』と書かれていた……」
魔王軍でも裏切りの事は把握していたんかいっ!
しかも不憫に思われるって……。
「私が魔王になってからはかつての魔道具は厳重に保管・管理していたんだが今朝無くなっていた、と報告を受けたのだ。すぐに諜報部隊に調査を命令した結果、どうやらこの国にある事がわかった。 ただ誰が持っているかはわからない」
「そんな物が世に出回ったら大変な事になるぞ……」
「もう国王にも報告してある、ノエルにも協力してほしい」
「わかった、そういう事だったら協力しよう」
この鎧が武術大会にも影響が出てくるとはこの時は思わなかった……。




