元勇者、商売の裏側を知る。
俺はワイズの店へとやってきた。
店内は冒険者達が剣や防具を見て回っている。
「この値段ならいけるな」とか「買うべきか我慢するか……、そこが問題だ」とか聞こえてくる。
「おっ! ノエルっ!」
「だいぶ繁盛してるみたいだな」
「おかげさまでな」
「やっぱり武術大会の影響か?」
「そうだな、この時期は武器屋にとっては稼ぎ時でもあるんだ。 武術大会で優勝すれば『優勝者が使った武器』として店に箔がつくからな」
なるほど、その影響があるのか。
「なんでも王都の店は値上がりしてる、と聞いたんだが」
「あぁ~、それか。 商売人の悪い部分が出てるんだよ」
「悪い部分?」
「要は客を選んでいるんだ。 優勝しそうな客には良い顔してそれ以外は対象外。だから、値段が高くしてるんだ」
「わざとなのか?」
「そういう事。 勿論、あってはいけない事なんだが……、俺も似たような事をやっていたからな」
ワイズはそう言って罰の悪い顔をした。
「一般だからまだこの程度だけど騎士ともなるともっと酷いぞ。自ら売り込みに行くからな」
「王家のお墨付きがほしい、て事か」
そういえば勇者時代に仲間に売り込みに来ていた商人がいたな。
俺は女神の加護が付いた武器しか使えなかったから相手にもされなかったな。
……あ、ちょっと悲しくなってきた。
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