元勇者、行き倒れを助ける
「はぁ~、助かったぁ……」
少女はあの後、用意したパンや干し肉をガツガツ食べ満足した笑顔をした。
「満腹になったみたいで何よりだ、俺はこの村の村長でノエルと言う、君の名前は?」
「私、アリル・ペインテットて言います。レグシア王国から来ました」
「レグシアってあの辺境ですかっ!?」
俺も聞いた事がある、レグシア王国は山脈に囲まれている国でなかなか余所からは入る事が出来ないくらいの国だ。
「なんで、そんな所からはるばるやって来たんですか?」
「目的は2つあって出稼ぎと人探しです」
「人探し?」
「はい、双子の姉なんですが『私より強い奴に会いに行く!』って武者修行の旅に出てそのまま帰ってこなくなっちゃったんです」
どこぞの格闘家の台詞だよ、そりゃ……。
「それで心配して探しに来たんですか?」
「いえ、心配はしてません」
キッパリと言いはなったアリルに俺はこけそうになった。
「姉は体力だけはある人なんでまぁ多分生きてるんじゃないか、とは思うんです。ただ人様に迷惑かけてるんじゃないか、と言う勘がよぎりまして、流石に外交問題になったらたまったもんじゃありませんし大事になる前に止めよう、と思いまして」
いや、どんな姉だよそりゃあ……。
また個性的な奴が来たなぁ。
「それで心当たりはあるのか?」
「はい、最近騎士狩りと言うのがいるみたいですね」
「はい、先日もうちの騎士団が被害に遭いました」
「多分、姉ですそれ」
「えっ!?」
衝撃的な発言に周りは固まってしまった。
「私達姉妹は傭兵なんですが姉は『傭兵の方が騎士より強い!』と断言してる人なんで間違いないです」
つまり自分の強さを誇示する為に騎士を襲っていた訳か。
「だとしたら早めに手を打たないと外交問題に発展しますよ、なんとか止めないとっ!」
「しかし居場所はわからないからなぁ……、よし、仕方がないな」
俺はある決意した。