元勇者、注意を喚起する
「えっ、襲われたっ!?」
「はい、昨夜パトロールをしていた者二人が騎士狩りにやられたそうです」
リリアからの報告を受けて俺は驚いていた。
「まさか、昨日の今日で現れるとはな……」
「ただですね、今回朧ながら姿を目撃をしたらしいんです。 それで証言によると騎士狩りは少女だそうです」
「少女っ!?」
「えぇ、ただ身のこなしは只者では無い、と。それに不思議な剣を持っているそうで触れただけで激痛が起こるそうです」
「リリア、騎士団って女性もいたか?」
「私も含めているにはいますけど数は少ないですよ。現場に出てるとなると片手ぐらいしかいません」
「騎士に憧れてる少女、っていう線は無いか?」
「う~ん、戦い方がどちらかと言うと暗殺者よりですよねぇ」
「暗殺者か、でも実際には死者は出ていないしな」
「狙いが何なのかわからないからこちらも対応できませんよ」
「まぁ、とにかく夜には気を付けた方が良いな」
「あっ、実はそれで考えたんですが村に『自衛団』を作ってみたらどうでしょうか?」
「自衛団?」
「はい、言ってみれば騎士団の村バージョンです。 人が多くなってトラブルも起こりやすくなりますから」
「そうだな、一々騎士団を呼ぶのも面倒だもんな……、そこはリリアに任せるよ」
「はいっ、早速募集をかけますね」
リリアの行動は早くて元冒険者だったり傭兵だったり様々な面々が集まった。
「言っておきますが自衛団はこの村限定の自主組織です。騎士団の様に特別な根源はありませんので勘違いはしないでください。大きなトラブルがあったら必ず報告するようにお願いします」
リリアの指示に集まった面々は素直に頷いた。
そして、自衛団が結成されて数日後、
「えっ、行き倒れ?」
「えぇ、村の入り口で倒れているのを発見しました」
団員の一人が少女を背負ってやって来た。
「おい、大丈夫か?」
「うぅ……、おなかが空いて……」
ボロボロの服を着た少女はお腹が空いていたようだった。
「すぐに何か食べる物を用意してくれ」
「わかりました」
この少女が実は騎士狩りと大きく関係しているとはこの時思わなかった。




