元勇者の幼馴染み、ケジメをつける
ハーブ亭で食事を終えた後、そのまま村に帰ろうと思ったらワイズが『寄りたい所がある』と言うので大通りにある建物の前にやって来た。
その建物の扉の前には『売地』と言う張り紙が張られ入口は木の板で塞がれている。
「此処って……」
「そう、俺が経営していたかつての店だ」
「そういえば告発されたんだったな……」
「あぁ、気になって新聞をチェックしていたんだが……」
メントル商会は告発を受けて店を乗っ取った経営者は逮捕、起訴されて裁判中らしいが有罪は確定らしく多額の賠償金が支払われるらしい。
店の評判もガタ落ちになり当然売り上げは減少、赤字になり借金を抱え店は売りに出される事になったそうだ。
「昔は、これで俺も故郷に錦を飾れる、て思っていたんだが……、こんな結果になるとはなぁ」
「お前が悪い訳じゃないんだ。 全部乗っ取った奴が悪いんだ」
「わかってる……、だから俺なりのケジメをつける為に此処に来たんだ」
そう言ってワイズはかつての自分の店を数分ぐらい見ていた。
と、突然声をかけられた。
「ワイズさんじゃないですか?」
「あぁっ! あんたは店に勤めていた……」
「ご無沙汰しています。此処に来ればワイズさんに会えると、思っていました」
声をかけてきたのは中年の男性でメントル商会の元店員だった。
「元気だったか?」
「えぇ、今は別の店で働いています。ずっとワイズさんにお詫びをしたかったんです」
そう言って男性は頭を下げた。
「メントル商会をこのような結果にしてしまい申し訳ありません」
「いや、頭を下げなくても良いんだ……。早かれ遅かれこうなる運命だったんだから」
「ワイズさんは本当に心の広いお方だ。本当に愚かな選択をした、と思いますよ。リッセルは……」
「リッセルって商会を乗っ取った奴か?」
「あぁ、所謂共同経営者でどっかの貴族の次男坊だ」
俺達はそれからメントル商会の末路を聞く事になった。