元勇者、シエンスの思出話を聞く
「へ? 聖魔術師が前の勇者パーティーの一員?」
「そうだよ、知らなかった?」
「全くの初耳なんだがっ!?」
そもそも伝わっている話や歴史書にもそんな話は書いてないし聞いた事がない。
「まぁ、知らないのはしょうがないかもね、この子みたいに前に出るのが苦手だったからね、え~とルーヤだっけ? 『サルジア』と言う名前を聞いた事が無い?」
「サルジア……?」
ルーヤは小首を傾げて不思議そうな表情をした。
「知らないかぁ、彼女も魔族で聖魔術師だったんだよ」
「魔族で勇者パーティーの一員?」
「そう、彼女は私が保護していた魔族でね、やはり迫害を受けていてねぇ……」
シエンスの話によるとまだ勇者パーティーに入る前にボロボロの状態だったサルジアと言う少女と出会った。
彼女は聖魔法を持っていたせいで迫害を受け命からがら人間界に逃げてきてシエンスの家の前で倒れたと言う。
保護をしたシエンスはサルジアを聖魔術師として育て勇者パーティーにサポート職として参加した。
サルジアの名前が勇者パーティーの一員として残っていないのは本人の意思もあるけどサポート職と言うのもあるらしい。
「それでサルジアは今は?」
「あぁ、彼女は今は亡くなってるよ。その彼女が残した本があるんだけど」
本?
「聖魔法に関する事を記した本なんだけどね、これも何かの機会だからルーヤにあげるよ」
「えっ……」
「きっと彼女も後輩の為に何かを遺そう、と思っていた筈。だから君が持つべきだ」
「うん……」
後日送ると約束をしてシエンスとは別れた。
「先輩がいたんだなぁ……」
「うん……、知らなかった」
「お~い、待たせたなぁ。無事許可が出たよ、てどうかしたか?」
「いや、ちょっとな」
ワイズが申請を終わらせて戻ってきた。