元勇者、アリスとルーヤの関係を知る
「アリス、ルーヤと何かあったのか?」
俺は思いきってアリスに聞いてみる事にした。
「へっ!? なんでっ?」
「いや、何と言うか……、幼馴染以上の関係だと感じるんだ」
「……流石は元勇者、わかっちゃうんだね」
やっぱり訳ありか。
「ルーヤは私にとって命の恩人なのよ……」
命の恩人?
「私が小さい頃の話、あの頃は前魔王ほどでも無いけど血も涙もない冷血だったわ」
アリスにそんな過去があったなんて……、想像つかん。
「恥ずかしい話、何も考えずに私は行動してたんだけど、そんな私にいつもついていたのがルーヤ。当時は魔導士だったから私の補助役をやってくれていたのよ。で、ある日、私は大けがを負っちゃうの」
「大怪我っ!?」
「死ぬかもしれないぐらいの大怪我で初めて命の危険を感じたわ。その時にルーヤが必死で助けてくれたの。その時に聖魔法が覚醒したのよ」
「つまり、ルーヤが覚醒したのはアリスのおかげか……」
「そうなんだけど、前にも言ったけど聖魔法は魔族にとってはハズレ魔法、迫害の対象になる……。だけど、私は命の恩人であるルーヤを切り捨てる事は出来なかった。そこから私は変わる事にしたの。だけど、前魔王がいる限りは聖魔術師は迫害の対象となる……。何にも力が無かった私にできる事はルーヤを周りから守る事だけだった」
「そうだったのか……」
「それで、私が魔王になったら聖魔術師の迫害を撤廃しようと思っていたの。 今回はその第1歩。 人類と共存できるきっかけにもなるでしょ?」
「そうだな」
「それで、お願いがあるんだけど、ルーヤをこの村に置いておいてくれない?」
「そりゃあ別に構わないがルーヤは承諾しているのか?」
「一応、話してはいるけど、ルーヤは引っ込み思案で感情出すのが苦手な子なの。どう思っているかはわからないけど、多分この村だったら変われるかもしれないの。私はルーヤにもっと自信を持ってほしいのよ」
本当にルーヤの事を心配してるんだな。
アリスと話した後、俺はルーヤとも話をした。
「ルーヤ、アリスから話は聞いた。色々大変だったんだな」
「……うん、でもそれが私の運命だから」
「そうか……、それでアリスからお願いされたんだが、ルーヤはこの村で住みたいか?」
「……今日、私の力を見て村のみんなは怖がらなかった。初めての経験だった」
そう言ってルーヤは微かに笑った。
「これからルーヤの力を狙う輩も現れるかもしれない。 ひょっとしたら今まで以上に酷い目に合うかもしれない。たが、俺やこの村のみんながルーヤを護る。俺達はルーヤの味方だ」
「……ありがとう。これからお願いします」
こうしてルーヤはこの村で暮らす事になった。




