元勇者、聖魔術師と会う
後日、アリスは一人の少女を連れてきた。
「連れてきたよ~、この子が聖魔術師のルーヤ・ネイコフよ」
紹介された少女は全身真っ白な服に身を包んでいた。
見た目は十代に見えるが頭にちょっとだけ角が生えている。
「聖魔術師のルーヤと申します。よろしくお願いします」
「ノエル・ビーガーだ、よろしく頼む」
「いえ、私の様な者が手伝わせて貰えるのであれば光栄です」
ルーヤは丁寧にお辞儀をした。
「なんだか神々しいと言うか……、感じた事がない魔力を感じるわ」
「アイナの言う通り、確かに今まで感じた事がない魔力を感じるな」
アイナに聖魔法について聞いてみたら、アイナも知らないらしい。
魔術協会に問い合わせてみたら存在は知っているがどんな物なのかは余りわかっていない『幻の魔術』と言われているそうだ。
「魔族にしか使えない魔術だったら知らなくてもしょうがないわね……」
「ところでアイナ、手に持っている水晶は?」
「協会から記録してくれ、と言われたのよ」
そりゃそうだろうなぁ、幻の魔術を見れるんだから。
「えっと、映像に撮っても大丈夫か?」
「はぁ……、別に構いませんが。それで加護を与える物はどちらに」
「この袋の中に入っています」
ワイズが袋の中から丁寧にアクセサリーを取り出した。
指輪、イヤリング、ピアス、ネックレス他数点。
「それでは始めさせてもらいます……」
ルーヤは指輪を握りしめて目を閉じた。
すると握った手が光った。
それ自体は短い時間だったがその光はなんとも表現が難しい、神々しい光だった。
「ふぅ……、これで終わりました」
「えっ!? もうっ!?」
「この指輪には『愛する人と一生寄り添う』祝福をかけました、では次です……」
淡々とルーヤはアクセサリーに加護を付けていった。
ただ、物によって光の色が変わった。
赤や黄色や青や緑……、様々な色が光った。
「いや、コレ凄いわよ……、まず無詠唱で使えるのも凄いし、あんなに様々な光を出すなんて見た事無い……」
「アレはね、物と対話してどんな加護をつけるか決めているのよ」
「物と対話?」
「そう、物の中に潜んでいる声を聞いて、その物が持っている力を引き出す魔術なのよ」
マジか……。
「はい、これで終わりました……」
「あ、ありがとうございます」
「いえいえ、微力ですがお力になれたら幸いです」
しかも、性格は穏やかで謙虚だし……、聖女ってルーヤの事を言うんじゃないだろうか。
「ありがとね、ルーヤ」
「ううん、アリスこそありがとう……」
「これで貴女を馬鹿にしていた奴らにギャフンと言わせられるわね」
「私は別に気にしてないからいいよ……」
「私が気にするのっ!」
アリスとルーヤのやり取りを見ていてふと思った事がある。
この2人の関係、ちょっと特別なんじゃないかって。
特にアリスがルーヤの事を気にかけているみたいだし。
何かあったんだろうか……。