元勇者、幼馴染みから相談される
「ただ、見た目だけじゃ物足りない、と思うんだよ」
「そうですか? 見た目は完璧だと思うんですけど」
「確かに見た目は良いんだ。 ただ、ずっと使って貰える為には+αが必要なんだ」
「+αですか?」
「そう、前の店をやっていた時は教会に頼んで『加護』をつけて貰っていたんだ。まぁ『御守り』みたいなもんだ」
「確かにただ売るよりも効果があった方が売れるかもしれないな」
「う~ん、精霊の加護をつけるにはちょっと有り余る感じがしますね、このサイズでは……」
と、俺達が話し合っていると勢いよくドアが開いた。
「ノエル、久しぶり!」
入って来たのはアリスだった。
「おぉ、アリスか、そういえば最近会って無かったな」
「仕事がゴタゴタしていて大変だったんだよぉ……、あれ?来客中だった?」
「あぁ、大丈夫だ。ワイズ、紹介しておこう。魔王のアリスだ」
「えっ!? 魔王っ!?」
そりゃ驚くよな。
「アリス、コイツは俺の幼馴染みのワイズだ。今度、この村で店をやる事になったんだ」
「へぇ~、私はアリス・デモン・コーズワルト三世だ。気軽にアリスと呼んで貰っても構わん」
「ワ、ワイズです。よろしくお願いします……」
ワイズはちょっと震えていた。
そりゃそうだろうなぁ、普通の一般人にとっては魔王なんて未知の存在だろうしな。
「ん? このアクセサリーは?」
「あぁ、今度ワイズの店で出す商品なんだ」
「へぇ~、素敵なデザインね」
「あ、ありがとうございます」
アリスはアクセサリーを手に取り目をキラキラさせていた。
やっぱり女性はこういうのが好きなのか……。
「それで、実は『御守り』みたいな力が欲しい、と話していた所なんだ」
「御守り? それって身を護ったりとか運が良くなったりとかそういう事?」
「まぁ、そうだな」
「それだったら心当たりがあるけど?」
「えぇっ!?」
「『聖魔術師』に知り合いがいるから頼んであげるわよ」
聖魔術師?
「聞いた事がないジョブだなぁ」
「私もです、初めて聞きました……」
「そりゃそうよ、聖魔法を使えるのは世界でも数人しかいないし、魔族の間では不名誉職と呼ばれているから」
「不名誉職?」
「魔族の中で一番メジャーなのは闇魔法、その対になっているのが聖魔法なのよ」
あ、そういう事か……。
「魔族にも関わらず敵対する神の魔法を使えるのは裏切り者と思われるのか……」
「そういう事。特に前魔王は聖魔法を使えるとわかった者を徹底的に排除していたからね」
「ん? でもアリスは知ってるんだよな?」
「私の幼馴染みで親友だもん、相談されて私が匿ってあげていたのよ」
……本当にあの魔王からよくこんな出来た娘が生まれたもんだ。
「それじゃあせっかくだから頼めるか?」
「勿論! 私もどこかで披露したいと思っていたのよ!」
「ワイズも良いよな?」
「あぁ、是非お願いします」