元勇者、クリスタの愚痴を聞く
「それじゃあ、お願いしま~す」
「よっし! 始めるぞっ!」
『おっす!』
ワイズの家の改装工事が始まった。
アムールが指示を出し職人達が動いている。
しかし、痩せ男のアムールがゴツい男達にアレコレと指示をしている……。
なんともシュールな絵だ。
「あの職人達はアムールとずっと仕事しているからやりやすいのよ、私もお世話になってるけど」
クリスタが様子を見ながら言った。
「信頼してるなら大丈夫だな」
「貴族の家を建てるよりは朝飯前よ」
「確かに無駄な装飾とかしなくていいよな」
クリスタはアムールと共同の工房をハノイ村に作り一緒に活動している。
たまに王都に行き貴族関連の仕事を請け負っている。
「全くその通りよ、最近は豪華主義は収まったけどたまにいるのよね」
「絢爛豪華な家を作ってくれ、て?」
「そうよ、しかもそれが愛人と一緒に住む為の家なんだから質が悪いわ」
「はぁっ!? そ、それってばれないのか?」
「勿論、バレバレよ。 実際に奥さんから連絡があった時のあの冷えきった声を聞くと背筋が凍るわよ、その後はどうなるかは……」
こ、怖いな……。
「大体、派手にするのは愛人の方のリクエストだったりするのよね。 貴族=金持ちていうイメージがあるから自己顕示欲を示したいんじゃないかしら」
「はぁ~、さっぱりわからんな」
「……ノエル様ってそういう欲とか無いわよね。 魔王を倒した後の生活って想像した事無いの?」
「う~ん、考えた事無いな。 別に地位とか名誉とか興味ないし」




