元勇者、幼馴染みと再会する
「住所は確かこの辺りだったな……」
俺はサラとリリアと一緒に申請書にあった住所にやって来た。
「ノエルの幼馴染み、と言うのはどんな奴なんだ?」
「ワイズと言うんだけど、村内では頭が良くて将来は商人になるのが夢だと話していたんだ」
最後にあったのは村を出た時だから、暫くの間顔を会わせた事がない。
「ん~、でも此処って『貧民街』ですよね?」
そう、俺達がやって来たのはシュヴィアの王都の貧民街と呼ばれるエリアだ。
家はあばら家で壁や屋根は穴だらけ、かつての村を思い出す光景だ。
「リリアはこういう所に来たのは初めてだったか?」
「そうですね……、一応知識はあったんですが実際に見たのは初めてです。来るとやっぱり違いますね」
俺達は貧民街を歩きながら路地裏にある長屋の一角にたどり着いた。
俺は扉を叩いた。
「ワイズ? 俺だノエルだ。いるなら出てきてくれ」
そう言うと家の中が足音が聞こえて扉が開いた。
「ノエル、ノエルなのか……?」
現れたのは無精髭を生やし髪もボサボサだが覚えている顔だった。
「そうだ、ワイズ久しぶりだな」
「ノエル……、会いたかったよ……」
久しぶりの再会にワイズはウルウルしていた。
「汚い所ですまないな、一応綺麗にはしてるんだ」
「綺麗と言うか、余り物が無いな」
「金目になる物は全部売ったからな……」
ワイズの部屋に上がらせてもらったが物が殆ど無く殺風景だ。
「なんか色々あったみたいだな……」
「あぁ、色々あったよ。 でもノエルだって一緒だろ? 国や仲間に騙されて……、その中にステラがいたのは俺もショックが大きかったよ」
「ははは……」
俺は苦笑いするしかなかった。
「ところでワイズはどうしていたんだ?」
「あぁ、村を出てからとある商会で下働きとして働いて2年位で独立させてもらったんだ」
「自分の店は持っていたんだ」
「あぁ、最初は上手くいっていたし将来を約束する相手もいた。しかし、1年前に全部失くしちまった」
「何があったんだ?」
「店を乗っ取られたんだ……」
「乗っ取られた?」
「あぁ、忙しくてある人物に店の運営を任せていたんだ。気づいたらソイツに乗っ取られて彼女も寝とられていた……、俺は自分が作った店から追放されてこの有り様だ……」
「大変だったな……」
俺はそんな言葉しか出なかった。




