元勇者、村の活気を知る
「最近、人の出入りが頻繁になってきてないか?」
俺は書類仕事をしながらリリアに聞いた。
「Sランクの影響ですよ。 移住希望者や店を持ちたい、と言う届がいっぱい来るようになりましたから」
やっぱりSランクの影響は凄いな。
「まぁ活気があるのは良い事だな」
「そうも言ってられないんですよ。 中には悪徳業者もいますし、他の領主から嫌がらせを受ける可能性がありますから」
リリアはそう言って眉を潜めた。
「そういえば、最近鉱山を買い取りたいとか言う者がいたな。 リリアが対応したんだったな」
サラの発言に俺は驚いた。
「えっ!? 初耳なんだけどっ!?」
「あぁ~、『鉱山を買い取って独占契約をしたい』って言う商会がいましたが丁重にお断りしましたよ。それに精霊達から危険信号が出てましたから」
「明らかに妖しさ満開の男だったな。 私が奴隷だった頃の主を思い出した……」
「そうか……、まぁ断ったなら良いんだがそういう話は俺の耳にもいれてくれよ。 一応領主なんだから」
「そうですね、明らかに怪しい話は私が門前払いにしますが得になりそうな話はノエル様の所に持っていきますね」
まぁ、リリアは王女だし騙そうとする輩もいないだろうし、任せた方が良いかもな。
「あっ、それで思い出したんですが商売をやりたい、と言う申請書が出ていたんです」
そう言ってリリアは一枚の用紙を俺の前に出した。
「道具屋か、そういえば武器や防具を扱っているのはギルドだけだったんだよな」
そう、店を作ろうにしても訪れる客は少ないのでギルドで取り扱っていたのだ。
「そろそろ商店はあっても良いと思うんです」
「そうだな……、ん?」
俺は申請書を見ながら申請者の名前の所で止まった。
「この名前……」
「どうかしましたか?」
「いや、もしかして……」
俺の脳内では小さい頃の記憶が呼び起こされていた。
そして、ある人物を思い出した。
「あぁっ!! 思い出したっ!!」
「へっ!?」
思わず大きな声を出してしまいリリアは驚いた。
「ノエル、この申請者に覚えがあるのか?」
「あぁ、コイツ俺の幼馴染みでこの村の住民だった奴だ」