元勇者、品評会に出席する
そして、品評会当日がやって来た。
城内にある普段は舞踏会が行われているホールが会場になっている。
俺達は与えられたスペースにカタナや野菜等を設置していく。
他を見てみると確かに煌びやかな剣やらが目立つ。
それに比べるとカタナには無駄な飾りは無くシンプルな物だ。
だが、俺はこれで良いと思っている。
「それでは品評会を始めます」
品評員の集団が各テーブルを回り始めた。
領主の中には品評員と談笑している奴もいる。
「あれ、絶対に贔屓してるっスよ」
ヨーミリが小声でボソッと言った。
「贔屓かどうかはわからないが関係はあるだろうな」
俺達は初めてだから余所者感がハンパない。
そこはリリアに頼るしかないだろう。
そして、遂にうちのテーブルに品評員がやって来た。
「ハノイ領の領主をしていますノエルと言います」
俺が名乗ると品評員達はおおっ、と言う声があがった。
やっぱり勇者の名前は抜群だな。
「補佐官のリリア・シュヴィアです。今回、我が領は品評会に出させていただくのが初めてですので皆様方の目にかなう物があるかどうかわかりませんがどうぞご覧になってください」
リリアがそう言って頭を下げた。
随分とへりくだっている物言いだがこれも手段の一つだと言う。
品評員の目に止まったのはやはりカタナだった。
「ほぉ……」
「これはこれは……」
「ノエル殿、この刃物は余り見た事が無いものだが」
「これはカタナと言いまして、東にあるワ国と言う国の技術を使って作られた物です」
「なんとっ!? ワ国と言えば門外不出と言われる技術で数々の美術品を産み出している国では無いかっ!」
えっ、そうだったの? 俺も今初めて知ったんだけど?
「はい、ワ国の職人と知り合いになりましてこちらにいるドワーフ族のヨーミリと共に我が領地で採れた鉱石で作りました」
リリアが一から十までハノイ領で作られた事を主張した。
「手にとって構わないかね?」
「勿論です。実際に手にとっていただいた方が価値がわかると思いますので」
品評員の一人がカタナを手に取りマジマジと観察する。
「これは……、見事な物だ……」
そう言ってポロポロと涙を流している。
余程感動したんだろうな、俺だって涙が出そうになったから。
このカタナには人を引き付けさせる何かがある、と思っている。
他の領主達もチラチラとこちらを見ている。
「これは文句無しのSランク相当でしょう」
「うむ、Aランクにするのは勿体無い」
「だとしたら他の剣をもう一回見直すべきでは?」
「それもそうですな」
品評員達の言葉に遠くから『えっ』と言う声が聞こえたが気にしなくて良いだろう。
「ノエル殿、素晴らしい物を見させてもらった」
「いえいえ、俺はまだまだ新参者ですので……」
こうして俺達の品評会は無事に終わった。
評価は後日、送られてくるらしい。
まぁ悪くはなかったから高評価を期待しておこう。




