元勇者、完成されたカタナを見る
更に1ヶ月が経過して、遂にカタナが完成した。
「これは……」
見た瞬間、言葉を失った。
言葉では表現できないくらいの素晴らしい出来だ。
「私も研ぎあがった瞬間、自分の目を疑ったっスよ、こんなに綺麗になるものなんっスねぇ」
「ただ研ぐだけじゃなくて如何に綺麗に研くかが重要なんだ。 砥石もこの周辺にある物を使った。 誰がなんと言おうとこのカタナは100%ハノイ領で作られたカタナだ」
タイジはそう太鼓判を押してくれた。
「これは見事です! 間違いなく品評会では高い評価を受けれますよ!」
俺も間違いなく高評価を受けるだろう、と思った。
そうなると気になるのは他の領主の動向だ。
ちょっと探りをいれてみるか……。
「……と言う訳だ。 守秘義務があるから厳しいと思うが」
「いえ、全然構わないですよ」
シュバルツは笑顔でそう言った。
「リストは貰っていますが今までと大体同じです。 まぁ剣に関しては外注に頼んでいるみたいですね」
「外注に頼んで良いのか? 自分達の領地で採れた物を自分達の領地にいるの職人に頼むのが筋だろう」
「基本的にはですが、領主達は金に物を言わせて作らせているそうです」
「品評員は指摘しないのか?」
「彼等自体に強い権限はありませんからね……」
「あぁ~、私も作りたくもない物を作らされた事もあるっス、ハデハデ~な奴、嫌だったっス」
うんざりした様な顔でヨーミリが言った。
「うちに関する情報は漏出してないよな?」
「えぇ、今の所は。と言うかあまり興味は無いみたいですね。自分達の事しか頭に入ってないみたいです」
相手にされてない、と言う事か。それはそれで悔しいな。
「大丈夫っスよ。 このカタナを見ればみんな度肝を抜かれるっスよ」
自信満々にヨーミリは言った。