元勇者、完成したカタナを見る
その日からヨーミリとタイジは工房に籠る事になった。
俺やユウスケが時々差し入れを持って様子を見に行っているが鍛冶士同士話が合うみたいでああでもないこうでもない、と専門的な話をしてるみたいだ。
話の内容はさっぱりわからないが『火力』とか『強度』とか『反り』とか『刃文』とかの話をしていた。
ユウスケ曰く『カタナには独特の模様が出る』らしくそれを刃文と言うらしい。
そして2週間後……。
「ついに完成したっス! 私の自信作っス!」
机には綺麗なカタナが置いてあった。
刃には波の様な模様が出ており上品な美しさを醸し出している。
「凄いと言うか……、なんとも言えない迫力がありますね……」
リリアがカタナを持ったがゴクリと息を飲み緊張している。
「まだ研ぎが終わってないからな」
「これでまだ未完成なのかっ!?」
「まだ本研ぎが終わっていないからな、それが終わったら完成だ。今の状態よりも倍に綺麗になるし切れ味も抜群だ。しかし……」
「何か問題でもあったのか?」
「いや、ぶっちゃけワ国で採れるゲンショウセキよりもかなり質が良いんだよ。 こんな上物はワ国にも無いぞ」
そんなに良いものなのか……。
「俺だって採れるのは知らなかったし……、ひょっとしたらワ国と環境が似てるかもな」
「あっ、それはあるかも。 始めてこの村に来た時からワ国と環境が似てるなぁ、とは思っていたんだよ」
俺の言葉にユウスケも同調してくれた。
「うぅん、これはミカド様に報告しておいた方が良いかもしれないな……」
「あぁ~、その必要は無いと思うよ」
「何でだ?」
「こないだ、ミカド様来たから」
ユウスケの発言にタイジは頭をおもいっきり打った。
「マジかっ!? あの方は国から一歩も出れない筈だぞっ!?」
「……のはずなんだけど、此処には直接は来てないけど周辺の国の結婚式があってね……」
ユウスケはこないだの結婚式の事を話した。
「そんなアクティブな人だとは思わなかった」
「僕もコウさんも驚いたよ……、あの様子だとちょくちょく出歩いているかもしれないね」
ユウスケは溜め息を吐きながら言った。