元勇者、トウショウと会う
「いやっ!? なんで連れて、って言うか間違いなく無理矢理連れてきたでしょっ!?」
「コイツの彼女に『作業場から一歩も出てこないからなんとか言ってほしい』と言われてな」
「それ、外の空気を吸わせてほしい、って言う意味でワ国から出せ、って言う意味じゃないですからっ!?」
「同じ外には変わらないだろう」
ユウスケのツッコミにコウは飄々と対応している。
……何か、ユウスケとコウの関係がわかって来た様な気がした。
「あの~、とりあえず紐外しちゃった方が良いんじゃないっスかぁ?」
「それもそうだな」
コウは縄をほどいた。
「ぷはぁ……、苦しかった……、コウ! いきなり拉致するのは止めろって言ってるだろっ!?」
「お前がアホみたいに作業場に引きこもってるからだろ? ミツハが心配していたぞ」
「俺はただ日々トウショウとして納得出きる物を作る為にだな……」
「連日不眠不休、飯も食わずに倒れる寸前まで作業する馬鹿がどこにいる?」
「ぐっ!?」
「えっ、またやったの? 前もミツハちゃんに凄く怒られていたでしょ?」
「いや、あの……、作業場にいると集中して時間があっという間に過ぎちまうんだよ……」
「だからと言って籠る必要がどこにある?」
「ぐぅ……」
うん、コウの勝ちだな、こりゃ。
とりあえず、落ち着いたみたいなので自己紹介をした。
「俺はノエル・ビーガー、ハノイ村と言う所で村長兼領主をやっている」
「あぁ、あんたがユウスケが手紙で書いていた元勇者か、タイジ・レイオウジ、ワ国でトウショウをやっている」
「私はヨーミリ、鍛冶士っス!」
「へぇ、鍛冶士? 確かに手は職人の手をしているな。 相当打っているんだろう。 しかも相当腕が良い、と見た」
「そんな事までわかるのか?」
「そりゃあ鍛冶士にとっては手は命みたいなもんだからな」
「流石っス! よく見てるっスねぇ。 実はタイジさんに相談があるっス!」
ヨーミリは例の鉱石について話した。
「ふぅん、なるほど……。 まぁ、同じ職人同士、困った事があったら助け合うのが人情っっていうもんだ。 俺でよかったら協力してやろう」
「ありがたいっス!」
「それにドワーフ族の作業に興味があるからな」
「相変わらず仕事熱心だなぁ……」
俺達はタイジを工房に連れて行く事にした。




