元勇者、品評会の傾向と対策を練る
「ミスリルが出る鉱山があったんですかっ!?」
「あぁ、廃山になって閉鎖されていたんだがその間に発生していたみたいだ」
俺はシュバルツに報告した。
「私が見つけたんですよ、兄さん!」
「流石はリリアだよ、補佐官としてちゃんと働いていてるね」
リリアはシュバルツに褒められて嬉しそうだった。
「実際の話、今ミスリルが余り取れなくて市場での値段が高騰していて鍛冶士達は困っているみたいなんですよ、ですから今回の報告は嬉しいですよ」
「それで採掘出来る作業員を何人か欲しいんだが」
「わかりました、声をかけてみますよ」
そう言うシュバルツは本当に嬉しそうな顔をしている。
余程、ミスリルが足りないんだな。
「まずは品評会に出す剣を作って評価を受けないといけないんだけどな、品評会ってどんな物が出るんだ?」
「その地区で採れた物で一番良い物を出していますね、これは去年の品評会の様子なんですが」
そう言ってシュバルツはあるファイルを見せてくれた。
そこには豪華な宝石が散りばめられた剣が載っていた。
「……これ、実用性あるか? こんなキラキラした物、戦いにくいだろ」
「全く同感です。ですが品評員は見た目の派手さとかを評価しているみたいですから」
「こういうのは貴族の遊びみたいな物ですからね、実用性は余り評価されていないんですよ」
「王家からは何か言えないのか?」
「なかなかそこまでは……、今までのやり方を変えるのは大変ですよ」
シュバルツはそう言って困った顔をした。
「だからこその今回の出展ですよっ! ヨーミリさんの作った剣が評価されればひっくり返ると思うんです!」
リリアが力強く言った。
確かにヨーミリの腕があれば高評価を受けるだろうし、逆に評価が低かったら品評員の見る目が無いだろうし、もしくは何らかの意図があるんだろう。
まぁ、良い物は良い、と素直に認める事が一番なんだけどな。




