元勇者、訪問を受ける2
今日もシュバルツがやって来た。
「レバニア国で『大陸会議』があったんですよ。月に1回行われ、今回は魔王討伐後初の会議だったんですが・・・・・・荒れましたよ。」
「なんでだ?」
「勇者の取り扱いについてですよ。危険視する国も少なくはないので。」
人類最強の力を持っている訳だからな、って俺の事か。
「何て言うかかなりピリピリしていましたね。勇者を持っているレバニアに世界の手綱を持っていかれるんじゃないかって。」
「魔王との戦いが終わったら今度は人間同士の争いかよ。」
何の為に俺は魔王を倒したんだか・・・・・・。
魔王、倒さない方が良かったんじゃないかって思うよ。
コンコン
玄関の扉を叩く音がした。
「はい、どちら様ですか?」
扉を開けると、端正な顔立ちの青年が立っていた。
「いきなり訪問して申し訳ありません。この土地の調査をしに来まして・・・・・・。」
「あれ? ミレットじゃないか。」
「えっ!? シュバルツ!? なんで此所にっ!?」
「知り合いか?」
「レバニアの第2王子のミレットだよ。ミレット、この方は真の勇者であるノエル様だ。」
「真の・・・・・・勇者・・・・・・?」
頭の上にハテナマークが浮かんでいるのが分かる。
「・・・・・・それでは、兄上や父上はノエル様の手柄を横取りした、という事ですか?」
「あぁ、これは紛れもない真実だ。」
「間違いないです。黙っていて申し訳ありません。」
シュバルツとアイナがミレット王子に説明をした。
ミレット王子は愕然とした表情をした。
「ノエル様っ! 我が愚兄と愚父が申し訳ありません! レバニア国を代表してお詫び致します!」
「いやいや、ミレット王子は悪くないから。」
「いえっ、知らなかったとは言え王族である僕が止めるべきでしたっ! 身内として恥ずかしい限りですっ! 愚兄と愚父には必ず罰を与えます!」
頭を下げるミレット王子。
王族が身分が下の人間に頭を下げれるなんて大したもんだよ。
王族とか貴族は上から目線の奴等が多くて正直好きじゃなかったけど、ミレット王子は好感が持てる。
「ミレットは苦労人だからな。国王や兄貴、身内の後始末は大体ミレットの仕事だ。」
なるほど、相当苦労してきたんだな。
「それが役目だと思っていましたが今回の件で決断しました。もう後処理なんてやりません。ノエル様の手柄を横取りするなんて神に対する冒涜です。僕は王族の身分を捨てて、この国を出ます。」
うん、怒ってるな、これは。
こういう真面目な人間を怒らせるのが一番恐いんだ。




