元勇者、品評会に参加する
ヨーミリがハノイ村にやって来て暫く経った頃、リリアがある紙を持って来た。
「品評会?」
「年に一度行われる国内各地から作物等を品定めしてランクをつける催しですよ。まぁ領主がちゃんと仕事をしているかどうかのチェックもあるんですが」
「へぇ~、そんな事が行われているのか、知らなかったな」
「ノエル様は領主としてはまだ初心者ですしこの村には名産品とかありませんからね。ただ今年はノエル様も参加していただきたい、と言うお父様のお願いがありまして······、多分補佐官である私のチェックもあると思うんですよ」
なるほど······。
「しかし、何を出せば良いんだ? 農作物だって普通だし目立つ物なんて無いぞ」
「そこで提案があるんですが······、ヨーミリさんが作った剣を出してみたらどうでしょうか?」
「ヨーミリの?」
「はい! ハノイ村の素材で作ったハノイ村製の剣は出す価値があると思うんですが」
そうだなぁ、まぁヨーミリに聞いてみるか。
「是非参加したいッス!」
うん、話をしたら即答で返事してきたよ。
「自分の腕がどれだけ通用するか試してみたいッス!」
「そうか、それだったらより良い物を作った方が良いよな」
「だったらやっぱり天然鉱石で作った方が良いッスね」
「そうなるとやっぱりミスリルか、でも市場に出る奴は目が飛び出る位高いんだよなぁ······」
ガーザスはそう言ってため息を吐いた。
「うちの領地内に鉱山があれば良いんだけどなぁ······」
「ん? 鉱山?」
「リリア、どうかしたか?」
「いえ、確か領内に鉱山があったはずなんですが······」
「マジかっ!?」
「はい、確か手付かずの鉱山があった、と······」
そう言ってリリアは机の上に地図を広げた。
「私、休みの時に領内を歩き回っているんですが、そこで村人から鉱山がある、と聞いた事があるんです」
リリアは地図内のある地区を指差した。
「此処は確かハムエク地区じゃないか?」
「はい、前領主が運営に失敗して手放した地区です」
まぁ、行ってみる価値はあるか。




