元勇者、ヨーミリの作った剣の試し斬りに立ち会う
作業が始まって1週間後、
「完成したッス! 純ハノイ村産の剣の第1号の誕生ッス!」
俺達の前には一本の剣があった。
「あの鉱石からこんな立派な剣が出来た、と思うと感慨深いものがあるよなぁ」
ガーザスが剣を持ってしみじみと言う。
「素材が良いから良い仕事が出来たッス! 自信作ッス!」
「早速試し斬りをしてみたいんだが······」
「それなら是非私にやらせてくださいっ!」
手をあげたのはリリアだった。
「それじゃあギルドの訓練場でやるか」
俺達はギルド裏の訓練場へと向かった。
此処は新人が冒険者のイロハを教える場所であり新しいスキルを手に入れた時のお試しの場でもある。
「じゃああの丸太を敵だと思って斬ってみてくれ」
「わかりました、では参ります!」
リリアは剣を構えて目を閉じて集中する。
そして、目を開けた瞬間
「はあああぁぁぁぁっっっっ!!!!」
一瞬にして丸太に近づき剣を振り下ろした。
ザンッ!と言う音がして数秒後に丸太はパカッと綺麗に真っ二つになった。
おぉ~、と言う歓声が響いた。
「ヨーミリさんっ! これ凄く良いですよっ! 切れ味は勿論、軽いしいつも以上に動けましたよ」
「本当ッスか!? ありがたいッス!!」
ヨーミリは作った剣を褒められて嬉しがっていた。
「ヨーミリ、無理はダメだがこれからも武器を作ってくれ」
「了解ッス!」
ヨーミリの作った剣の試し斬りは大成功に終わった。
それから1ヶ月後、
「最近ギルドの任務成功率が上がっている?」
「あぁ、ヨーミリの作った剣を使った冒険者達がいつも以上に結果を残しているんだよ」
ガーザスが資料を見せながらそう言った。
「確かに向上してるな」
「それだけじゃなくて持ち帰って来た魔物の肉とかの状態がめちゃくちゃ良いんだよ」
「それってやっぱりヨーミリさんの作った剣が要因じゃないんですか?」
「間違いなくそうだと思う」
「私も使った時に異常に馴染みやすかったんですよ、何か加護が着いてるんじゃないですか?」
加護を着けるとなると······。
「私じゃないわよ、私は火をつけているだけだから」
フローラは自分じゃない、と言った。
「ただ、あの子出来上がった剣に祈りを捧げているのよ」
「祈り?」
「そう、多分ねあの子『付与術士』の力も持っているわよ」
「付与術って仲間をちょっとだけ力を与える、て奴だろ?」
「その中でもあの子は強力な付与術を持ってると思うわよ。そんな子が付けた付与だからそりゃあ剣自体も強くなるわよ」
もしかして、とんでもない逸材が来たんじゃないか?




