元勇者、ヨーミリの事情を聞く
「さて、職場となる鍛冶場に案内しようか」
俺達はギルドの隣に作られた鍛冶場へとやって来た。
「これがアタシの工房ッスかぁっ! これでアタシも一国一城の主ッス! 誰にも文句を言われずに好きなだけ作れるッス!」
ヨーミリは鍛冶場を見て目をキラキラさせて嬉しがっていた。
「ん? ヨーミリって1人で作っていたんじゃないのか?」
「アタシは爺ちゃんから技術を学んで魔属領の中でも大手の工房で働いていたんスけど······、どうも馴染めなかったんスよぉ」
「人間関係か······」
「そうッスね、特に上司には目の敵にされていて何回もダメ出しを喰らったッス」
「なんでダメなんだ? こんなに良いのに」
「う~ん、あんまよくわかんないッス! だからアリス様から話をもらった時はめちゃくちゃ嬉しかったッス! これからはこの村の為にドンドン作るッスよ!」
そう言ってヨーミリは笑った。
しかし、気になるなぁ、ヨーミリの元上司······。
アリスに聞いてみるか。
「あぁ、あの店ね、あそこはリゾフさんのライバルが運営してるお店なの」
後日、アリスがヨーミリの様子を見に来たので聞いてみた。
「ライバルの店?」
「うん、規模はでかくて何百人の鍛冶士を雇って大量に作らせてシェアはNO.1、だけど私はあまり好きじゃないなぁ」
嫌そうな顔をするアリス。
「リゾフが一番じゃないのか?」
「腕が良いのはリゾフだけど、彼は商売気が無いのよ。職人気質、って言うのかな? でも作る武器は完璧だから魔王軍でも上層部の物しか扱えなかったの」
「地位や名誉、金とか興味ないのかぁ」
「リゾフのライバルのマリフオは所謂ボンボンでね、金に物を言わせて設備を一番良いものにしたり一流の職人を雇ったりで規模を大きくしたみたい。でも品評会ではリゾフの方が評価は高かったから目の敵にしていたみたい」
「はぁ~、何処の世界でも嫉妬はあるんだなぁ。それでヨーミリをわざと······」
「命令していたみたいね、でもヨーミリは基本的に脳天気な性格だからダメージはなかったみたいね」
完全に一人相撲だった訳か。




