元勇者、謎の少女を見る
さて、パーティーもいよいよ佳境にさしかかってきた頃、ケンビア王から挨拶があった。
「今回は我が娘の結婚式に来ていただき誠にありがとう。心からお礼を申し上げたい。この若い夫婦を何卒暖かい目で見守っていただきたい」
そう言って国王は礼をした。
「このめでたい席で報告するのもなんだが実は我が国で反乱を計画していた貴族がおりこの結婚式を潰そうとしていた。しかし勇者ノエル殿とそのお仲間に協力してもらい、その反乱者達を捕縛し未然に防ぐ事が出来た。改めてだがノエル殿とお仲間に礼を言わせていただく」
おぉ~、という声と『流石は勇者』という声が聞こえた。
······俺、何もしてないんですけど?
コウ、ニヤニヤしながら見ないでくれ。
「これからも我がケンビア国をよろしく頼みたい」
それで国王の挨拶は終わった。
と、ここでミラージュがマイクを持った。
「皆様、私聖王教会の者ですが最後に未来あるお二人と会場の皆様に幸運がありますようにプレゼントを用意しました」
そう言うとミラージュの後ろから一人の狐の仮面を被った少女が現れた。
「「えぇっっ!?」」
その少女を見た瞬間、ユウスケとコウが驚きの声をあげた。
「コウさん、あの人は······」
「いや、まさか······、しかし、あの身なりは······」
「2人ともどうしたんだ? あの少女は知っているのか?」
「うん、あの方は······」
「多分、俺達が知っているお方だ。だが滅多に姿は現さない筈······」
なんか2人とも焦っているみたいだが······。
「これより皆様に見ていただくのは幸福を願う舞です。皆様方に幸がある事を祈りを込めて舞います。それではご覧ください」
ミラージュの合図により少女はゆっくりと動き出し両手に持っている鈴をつけた棒を鳴らしながら回り始めた。
その姿は神秘的で神聖なる空気が辺りを包んでいた。
「や、やっぱり······」
「ユウスケ、あの舞は?」
「あれは『カグラ』と言ってワ国に古くから伝わる舞であれを踊れるのは一部の人間しかいないんだよ······」
「という事は?」
「あのお方はミカドだよ······」
えっ!? ミカドってワ国の王様だよなっ!?
あんな少女なのかっ!?
「ノエル、ミカドは見た目は少女だがあの姿で何百年も生きている方だぞ······」
マジか······。
舞が終わり少女が頭を下げると会場から大きな拍手があがった。
中には泣いている人もいて理由はわからないが人を惹き付ける物だった。
こうして結婚式は無事に終わった。
後でミラージュに聞いたがミカドとは長い付き合いでコウから話を聞いて連れてきたらしい。




