元勇者、結婚式に出る
早朝から最終準備として祭壇や会場の飾りつけのチェック等を終えた頃、ぞろぞろと客がやって来た。
「こんな所に庭園があったとは······」
「いや、ここは確か原っぱだった筈だが?」
「まるで夢みたいな光景だ」
驚くのも無理は無い、つい数日前は何もない原っぱだったんだからな。
「ノエル様、お久しぶりです」
「おぉっ、ラミア姫。久しぶりだな」
「アミアから今日の事を聞いて楽しみにしておりました」
ニッコリ笑うラミアは友人の結婚を純粋に喜んでいる様な笑みだった。
「皆様、新郎新婦がご入場になります。拍手でお迎えください」
緑のアーチを潜りウェディングドレスを着たアミアとタキシードを着た新郎であるメークが会場に入ってきた。
周りからは『おめでとう!』とか『幸せになれよ!』という声が聞こえてくる。
祭壇の前にやって来た2人をミラージュが迎える。
「あの少女は誰だ?」
「あの服って聖王教会の服じゃないか?」
「えっ!? という事は教会のお偉いさんか?」
招待客の一部からヒソヒソ声が聞こえる。
まさか聖王本人とは思うまい。
「汝アミア・ケンビア、新郎メークを生涯いかなる苦難を共に乗り越え一生愛する事を誓いますか?」
「誓います」
「汝メーク・トワンド、新婦アミアを生涯いかなる苦難を共に乗り越え一生愛する事を誓いますか?」
「誓います!」
「それでは誓いのキスを」
メークがアミアに近づきキスをした。
その瞬間に大きな拍手が鳴り響いた。




