元勇者、魔法神と会う
「本当に貴族の屋敷みたいだなぁ」
屋敷に入って来た俺達は中をキョロキョロと見回す。
「でもメイドとか執事とかはいないんですね」
確かにあれだけ大きな物音を出しても飛び出して来る奴が1人もいない。
「中級神にはつかないわよ。上級神になれば天使がつくけど」
「それじゃあアクア様やフローラ様には天使はついていないのですか?」
「そうだよ、まぁ神に成り立ての頃はお姉ちゃんに付いていた天使が私の指導係をやっていたんだけどね」
そんな話をしながら俺達は広間から階段を上がり2階へとやってきた。
そして、ある部屋の前でアクアは止まった。
「こらぁっ! 居留守を使ってないで出てきなさいっ! 10秒以内に開けないとこの扉ぶっ壊して強行突破するわよっ!いーち、にぃー、さーん······」
アクアがカウントダウンを始めると中からガチャガチャと音がして扉がゆっくりと開いた。
「ア、アクア姉······」
「やっと出てきたね、久しぶりだねエリンジャー」
顔を見せたのはあどけない少年だった。
「この方が魔法神様なんですか?私達が伝え聞いていた姿とは違うような······」
「人間界に現れる時は姿を変えたりする事もあるし中には替え玉を使う事もあるわ」
レイチェルの疑問にフローラが答えた。
「な、なんでアクア姉が······、しかも人間を連れて来るなんて······」
「あんたの行いで地上で迷惑がかかっているのよっ! とりあえずゆっくりお話しましょうか?」
ニッコリ笑うアクアだが後ろから黒いオーラが出ている。
魔法神エリンジャーは顔面蒼白でガタガタ震えている。
「エリンジャーはアクアには頭が上がらないからね」
フローラの言葉に俺は納得するしかなかった。




