元勇者、火の女神に会う
「じゃあ、行こっか」
そう言ってアクアは歩き始めた。
「魔法神がいる所はわかっているのか?」
「勿論、アイツの家は私の近所だもん」
なるほど、だったら知ってる筈だ。
「さっさと行かないと余計なのと出くわす事が『あら? アクアじゃない』······」
アクアが明らかに嫌な顔をしている。
「珍しいわね、神界に滅多に戻って来ない貴女が人間達を連れて来るなんて」
そう言って俺達に近付いて来たのは真っ赤な長髪にスタイルが良い色気を漂わせる女性だった。
「アクア、知り合いか?」
「······火の土地神フローラ、私が一番会いたくない奴」
そう言うアクアの顔はひきつっていた。
「俺はノエル・ビーガーと言います」
「ノエルって······、もしかして貴方が勇者?」
「元、ですけどね」
俺がそう言うとフローラは俺の手を握って来た。
「貴方には一度会ってみたかったのよ♪ アクアが全然会わそうとしなかったからぁ、どう? 私と契約しない? アクアより良い仕事······」
どっぱぁぁぁぁんっっっ!!!!
「きゃああああぁぁぁぁっっっっ!!!!」
いきなり横から水の塊が飛んできてフローラが吹っ飛んだ。
「いきなり初対面で口説いてんじゃないわよっ!!」
アクアが手を前に出して怒鳴っていた。
フローラはびしょ濡れになっている。
「げほっげほっ······、じ、冗談よ。ちょっと試してみただけじゃない」
「そのわりには、かなり接近してきたみたいだけど?」
「わたしだってあの土地を管轄している土地神の1人よ、仲良くなる権利はあるでしょ」
「あんたは誰彼構わず口説こうとしてるでしょうがっ!? あんたの被害を受けた男神達のフォローを幼なじみだから、と言う理由で私がしなきゃいけないのよっ!!」
暫く2人の口喧嘩が続いた。




