幕間 ノエルが勇者になった後8
あれから僕はそのお店に通うようになりマスターと徐々にだけど仲良くなっていった。
たまにミナも連れて行って『彼女さんかい?』と言われてミナは顔がボンッと真っ赤になった。
まぁ僕も顔が真っ赤になった、と思う。
そんな日々を過ごしていたある日の事、いきなりマスターが突然告白してきた。
「実はな……、店をたたもうと思っているんだ」
「えぇっ!? どうしてですかっ!?」
「俺ももう年でな、そろそろ隠居を考えていた所なんだ」
「そうなんですか……」
僕はちょっと残念な気分だった。
「ただ、この店は信頼できる人に譲ろうと思っていたんだ、それでな……」
マスターは僕の目を見て言った。
「ユウスケ、お前だったら信頼できる、この店を貰ってくれないか?」
「はい?」
いや、確かに僕の理想としている店舗でこんなお店で喫茶店をやりたい、とは思っていたけど、まさか現実になるとは……。
しかし、此処で断るなんて選択は無い。
「ユウスケ、店を経営していく中で一番大切なのは何かわかるかい?」
「一番大切な物?」
「それはお客との信頼関係だよ、例え美味しい料理があってもお客との関係を大事にしないと一回は来ても次は来ない」
「なるほど……」
「ユウスケは性格が良いしそんなに欲が無い。欲のある人間はいずれは変わってしまう。私も冒険者をやっていた頃は色んな人達を見てきたから信頼が出来るかできないかはわかる、ユウスケは信頼できる人間だ」
「ありがとうございます、そこまで評価してくれているのは嬉しいです。喜んでこのお店を継がせてもらいます」
その後、正式に名義がマスターから僕に変更してお店は僕の物となった。