幕間 ノエルが勇者になった後7
活動の場をシュヴィアに移した僕は依頼をこなしつつ物件を探していた。
理想としては路地裏にある大きくない店舗、理由は別に金持ちになるつもりは無いし有名になるつもりは全く無く、知る人ぞ知るみたいなお店がほしいのだ。
「まぁそう簡単に見つかる訳は無いんだけどね」
1人、路地を歩きながら呟いていた。
こういうのは不動産屋に相談するのが一番良いんだけどこうして自分の足で歩いた方が見える事もある。
今歩いている所は平民街で長屋がいくつも繋がっている。
こういう所に喫茶店とかあったら一番良いんだけどね。
「······ってあったよ」
古ぼけた感じの所謂『純喫茶』と言う感じの僕の理想とした店舗が目の前に現れた。
あったら良いな、とは思っていたけど実際に見たらちょっと呆然としてしまったけどまだお店はやっているみたいだから中に入ってみた。
「いらっしゃい」
中にいたのは初老の男性だった。
「え~と、コーヒーとタマゴサンドをください」
「かしこまりました、お兄さんは初めてかい? 余り見ない顔だけど」
「はい、レバニアから引っ越して来ました。冒険者をやっています」
「へぇ、私も若い時は冒険者をやっていたんだよ。足を怪我してからは引退したんだがね」
「そうなんですか······」
店主は凄く喋りやすい人だ。
喋りながらも手は動かしていて手際が良い。
「はい、コーヒーとタマゴサンドね」
出されたのは分厚い卵焼きが挟んであるタマゴサンドとコーヒー。
「いただきます、······うん、美味しい!」
タマゴサンドもコーヒーも美味しい。
「嬉しいね、そう言う風に言ってくれると」
「僕も料理をやるんでわかるんです」
「ふーん、それじゃあ将来は自分のお店を持ちたい、とか思ってるの?」
「はい、こういうお店をやりたい、と思っているんです」
「へぇ、若いのに珍しいね、大通りとか人が多い所の方が良いんじゃないの?」
「僕は目立つのが好きではないんで······」
「そうかい······」
店主はなんか考え込んでいる様な顔をしていた。




