幕間 大陸会議
とある日の事、シュヴィア城にて『大陸会議』が行われていた。
大陸会議とは大陸内の国の代表者が集まる会議の事で今までは魔王討伐がメインの議題だったが、魔王が倒され魔族との共存へと舵をきっている今の議題は各国との関係性になっている。
シュヴィア国から代表として来ているのはシュバルツである。
「こちらが新たに編纂された歴史書です」
シュバルツが手にしていたのはリベルが手掛けた歴史書である。
「この本には調査の結果、新たにわかった事を加えております。我が国としてはこの本に書かれている事を今後の公式見解にしたいと思っております」
本を読んだ出席者達はざわついた。
「これは・・・・・・今まで伝えられていた事と違うじゃないか!?」
「魔族が強くなったのも全ては我々の責任というのか・・・・・・」
「納得いかない方もいらっしゃると思います。しかし、紛れもない事実なのです。我々の先祖が犯した罪なのです。そして、疑いもせずに魔族を滅ぼせば平和になると信じきっていた我々にも責任はあるのです」
淡々とシュバルツは語る。
「だからこそ過ちを認め過去を反省し未来に生かすべきだと私は思います。皆様方にもご理解していただければ幸いだと思っております」
シュバルツの言葉に反対の意見は出なかった。
会議終了後、シュバルツはある人物に声をかけられた。
「シュバルツ、お疲れさん」
「『ヨーク』か・・・・・・」
シュバルツに声をかけてきたのは『ヨーク・コバルト』、コバルト国の王太子である。
茶髪に茶色の目、余り王族らしからね、どちらかと言うと野性的な感じがする青年である。
「ヨークも会議に出るなんて珍しいよ」
「メイアが口煩いんだよ。アイツ最近になって王族らしくなった、というか・・・・・・。此処でのお茶会が効いたみたいだな」
「そっか・・・・・・、歴史書の件は」
「あぁ、親父に伝えとく。多分賛成すると思うぞ。親父も魔族との関係は良いビジネスチャンスだと思ってるみたいだからな。長年の頭痛の種だったケンビアとの関係も改善しつつあるしな」
「それは良かった・・・・・・」
「俺的にはあんまり良くないんだよなぁ。ケンビアのアミア姫と今婚約の話が進んでるんだよ。俺はまだ独り身を謳歌したいのに」
「諦めろ、王族には自由な恋愛なんて無いんだから」
「それは実感してる、メイアの婚約破棄騒動があったからな・・・・・・、アイツも恋人が出来たらいいんだけど暫くは無理だなぁ。仕事と結婚してる様なもんだし・・・・・・」
ブツブツと言うヨークを見てシュバルツは『なんだかんだ言って心配してるんだな』と思った。
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