元勇者、奈落の谷のシステムを知る
「それはどういう事だ?」
「皆さんは魔族が死んだら魂は何処に行くと思いますか? 人間は死んだらあの世に行き善人であれば天国、悪人であれば地獄に行く、と言われていますが」
……考えた事が無かった。
「まぁ、普通は考えないでしょう。魔族の場合は死んだら一度冥界に魂が送られます。そして、転生して人間になったり魔族にまたなったりします。それがどういう基準で選ばれるかどうかはわかりません。しかし、中には転生も出来ない魂もある訳です」
「それが、魔王とか幹部の魂……」
「その通りです。その行きつく先がこの奈落の谷なんです。そんな彼らの負の力が障気の原因なんです」
「と言う事は父上の魂も彷徨っているのですか?」
「えぇ、ここには出口がありませんからね、彼らの魂は永久にさまよい続ける訳です。抜け出すためにはこの家にたどり着けなければならないんです」
「この家に?」
「えぇ、私は管理者ですからね。魂を冥界に移す事も出来るんです」
奈落の谷が魔族にとっては地獄みたいな所だったのか……。
「さて、では障気を抑える様にしましょう。一旦、失礼します」
そう言ってサザラスは部屋の奥へと行ってしまった。
「あのサザラスっていう奴、何者なんだ? ただの錬金術師じゃないだろ?」
「確かに、此処の管理人と言う事は魔族関係だというのはわかるんだけど」
「アリス、何か知ってるか?」
「いや、私も初めてみる顔だ」
「メナルティは知ってるのか?」
「知ってるー……、だから会わせたの」
そう言って悪戯っ子の様な笑顔を見せるメナルティ。
俺は薄々わかっていたが聞いてみる事にした。
「メナルティ、サザラスは……、初代魔王なんじゃないか?」
「せいかーい……、流石ゆーしゃ」
「エッ!? 初代魔王って、倒されたんじゃなかったの?」
「私も勇者に打倒された、と聞いているぞっ!?」
どうやら魔族の中でも極秘事項だったみたいだ。
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