元勇者、奈落の谷へ向かう
翌日、俺達はアリスの案内で奈落の谷へと向かった。
「奈落の谷に近付くと同時に障気の影響が大きくなるから注意してほしい。一応、予防薬として、中和する薬は用意してある。気分が悪くなったらいつでも言ってほしい」
「準備いいな」
「私が障気に弱いのだ・・・・・・」
「魔王なのにか?」
「小さい頃に父上に奈落の谷に落とされた事があって、トラウマなんだ・・・・・・」
そう言って心底嫌そうな顔をするアリス。
・・・・・・やっぱりアイツは倒して正解だったな。
そんな話をしながら、幸運にも体調を悪くした者はいなくて無事に奈落の谷へと到着した。
谷を覗くと底は真っ暗で何も見えない。
「全く何も見えないな、ノエルどうする?」
「そうだな、ロープを垂らして降りていった方が良いか・・・・・・」
「でも、底は見えないし深さもわからないわよ。ロープが足りるかどうかも・・・・・・」
どうやって下に降りるべきか俺達は思案をしていた。
が、その時後ろから声がした。
「問題・・・・・・無いよ・・・・・・」
後ろを振り向くと・・・・・・
「メ、メナルティ・・・・・・」
「ぶい・・・・・・」
邪神メナルティが何故かVサインをして立っていた。
「メ、メナルティ様がどうして此処に?」
「奈落の谷・・・・・・、私の庭・・・・・・」
アリスの質問にメナルティは明確な答えを出した。
なるほど、メナルティにとっては魔族領は庭みたいな物か。
「下に降りたいなら・・・・・・、階段がある・・・・・・」
そう言って、メナルティはトコトコと谷の近くの草むらに行きガサガサと地面の土を払うと蓋みたいな物が出てきた。
その蓋を開けると階段が出てきた。
「そんな所に階段があったなんて・・・・・・」
「私が作った・・・・・・、えへん」
「作ったって・・・・・・」
「初代魔王の本を見て・・・・・・、参考にした」
なるほど、人間の知恵を使ったという事か。
俺達はメナルティの案内で谷の底へと続く階段を降りていった。
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