サラ、元部下と会う
「とりあえず、まずは長旅の疲れを癒して、明日現場に案内しよう」
そう言ってアリスは手を叩いた。
扉が開いてメイドがワゴンをガラガラと運んできた。
ワゴンには美味しそうな料理がある。
「食事を用意したので食べてくれ。人族の町で修業した料理人が作った物だ」
「へぇ~、じゃあ早速」
ガーザスが一口食べた。
「美味いっ!! コレ高級レストランの味だぞっ!!」
俺も食べてみた。
「うん、確かに美味い。少なくとも一般の食堂よりもレベルは高いぞ」
「魔族にこんな手が込んだ料理を作れる者がいたとは知らなかった……」
「今までの魔族は単純に『煮る』、『焼く』しか出来なかったがこの料理を作った者のおかげで料理の質は倍以上に上がっている」
「一体どんな人が作ったのか見てみたいな」
「そうか、料理人を呼んでくれ」
アリスの命令にメイドの1人が部屋を出て行き暫くしてコック姿の女性を連れて来た。
そのコックを見た瞬間、サラは驚きの声を上げた。
「『アルーマ』っ!?」
「サ、サラ部隊長じゃありませんかっ!?」
「サラ、知り合いか?」
「私の直属の部下だ。かつては『皆殺しのアルーマ』と呼ばれている位凶暴な奴だったのだが……」
そんな二つ名があるとは思えないぐらいアルーマと呼ばれた女性は凄く落ち着いた雰囲気を出している。
「部隊長、お元気で良かったです……」
アルーマは涙ぐんでいた。
食事を終えた後、俺達はアルーマの話を聞く事にした。
「部隊長が更迭されて我が隊は解散、私も軍をクビになって生活の為に人族の町に行き最初は冒険者として活動していたんですが、その町の食堂で食べた料理が美味しくて感銘を受けて弟子入りをしたのです。そこで料理だけでなく精神も鍛えられたんです」
なるほど、それで攻撃性が抑えられているのか。
「私の募集に応募して雇ったのだが、まさかかつての狂戦士だとは思わなかった。魔族でも人族と上手くやっていける事を知ったのだ」
この後、風呂も入り俺達は就寝した。
本日、公式情報が発表されました。『元勇者は静かに暮らしたい』は12月20日発売です!よろしくお願い致します。