元勇者、魔王アリスの評判を聞く
「……という訳で今リベルに頼んだよ」
「彼の事は噂では聞いていましたが、アイナさんの弟さんだったとは……」
俺はシュバルツにリベルの事を報告した。
リベルは暫く村に滞在してもらう事になった。
「正直、うちの研究機関に頼まなくて大正解でしたよ。彼らに任せていたらどんな物になっていた事か」
「恥ずかしい話ですが既存の意識から抜け出せないのが現状です。『魔族は悪』が今でも根強いですからね」
「でも、アリスのおかげでかなりイメージは脱色していると思うぞ」
「確かにその通りですね、人間国でも評判は高いです」
勿論、それはアリスの外交努力が実を結んでいるからでもあるが、アリスは見た目10代の女の子であり天然のドジっ子でもある。
本人は不本意ではあると思うけど、そういう部分が特に男性には評判が良い。
「密かにファンクラブが出来上がっているみたいですからね」
「いつの間にそんな物が出来てるんだよ……」
「まぁ、争いが無い事は良い事ですからね、全然構わないんですけど」
と話しているとドアが開き当のアリス本人が現れたから内心ビクッとした。
「勇者ノエル、噂は聞いたぞ。今、我々魔族の事を本にする作業をしているようじゃないかっ!」
「あぁ、報告が遅れてすまなかったな」
「いや、そう言う事は大歓迎だっ! 何せ我々には『文字にして残す』という文化が無いのだ」
そう言ってアリスはニコニコと笑っていた。