元勇者、頼む
「でも、名前が売れてくると変な嫌がらせとかも多くなるんじゃないか?」
「確かにその通りです。資料を閲覧したいと思っても個人ではなかなか貸し出してくれないのが現状です」
「黙らせる方法があれば良いんだけどね……」
「黙らせる方法ならあるぞ」
「はい?」
俺はリベルに歴史書の事を話した。
会って間もないが人間的に信頼できる、と判断したからだ。
俺の話を聞いたリベルはちょっと戸惑ったような顔をした。
まぁ、当たり前だと思うが。
「まずはその歴史書を見せてもらえませんか? 僕の手に負える物なのか判断したいので……」
「そうだな、実物を見てもらった方が早いな」
俺達は歴史書がある俺の家へと向かった。
歴史書は俺の家の一部屋にまとめておいてある。
「これが歴史書だ」
「凄い……」
そう言ってリベルは一冊を持ってパラパラとページをめくった。
「流石は聖国ですね。事細かに起こった出来事を明記している。これは学者や研究者にとってお宝ですよ……」
「だからこそ、信頼のできる人物に託したい、と思ってるんだよ。リベル、やってもらえるか?」
「僕で良かったら協力します。是非やらせてください」
俺はリベルに本の編纂を頼んだ。
「しかし、あんな才能があるのに魔力が無いから追い出す、なんて本当に見る目が無いな」
「本当にその通りよ。両親は魔術至上主義だったから、それ以外の才能は全否定していたのよ」
「でも、アイナは連絡は取り合っていたんだろ?」
「連絡を取り始めたのはこの村に来てからよ、たまたま新聞にリベルの名前が載っていたから連絡を取ったのよ。あの子、昔と変わらないで接してくれたわ……」
そう言ってアイナはちょっと涙ぐんでいた。




