元勇者、不都合な真実を知る
「そもそも魔王を生んだのも昔の王族なのよね」
「確か、シエンスの師匠が初代魔王なんだよな? 錬金術が周りから評価されなくて魔界に行って……」
「それもちょっと違うのよ、魔族側から見れば初代魔王は『魔界に革命を起こした英雄』と言われているわ」
「英雄?」
俺はサラの方を見て、サラは頷いた。
「あぁ、当時の魔族は知恵も無くただ暴れるだけだったが初代魔王が知恵や人間の技術を教えたおかげであっという間に発展をしていった、と言われている」
「でも人間族からしてみれば『裏切り者』のレッテルを張られてしまった訳。私達も信じていたけど、後々、初代魔王の日記を見つけて真実がわかって、かなりショックを受けたわ。因みに初代魔王を否定し続けたのはレバニアの国王よ。私達を招集したのもソイツだし、反対していたのはシュヴィアの国王。あの頃から関係は変わってないのよね」
呆れたようにミラージュは言った。
「でも、今では錬金術は評価されているじゃないか?」
「それもシエンスが師匠の意志を引き継いで錬金術で色々な物を発明していったからよ。本人も色々考える事があったんじゃないかしら」
「結局は敵に塩を送った事になるんだよな。当時の貴族や国王達にとっては『不都合な真実』だよなぁ、自分達が魔王を間接的にも生んでしまった訳だから」
「そう、だから余り広まってない訳。下手したら暴動が起こりかねない事だから。それも私達は聖国を追いやった理由でもあるわ」




